“右脳ドリブン”のアプローチで、空間の可能性を高める
ドラミートウキョウが提供する「新しい価値」の源泉となるのが、真榮城氏が言う「“右脳ドリブン”のアプローチ」だ。
例えば、同社がクライアントのリテール企業に新しい業態を提案する場合、まずは社内デザイナーたちに、「半年先には、どんなデザインや空間が受け入れられるか?」を尋ねる。ハイブランドの店舗ディスプレーなどを数多く手掛けたデザイナーたちは、時代の先を読み取る感性が敏感だ。その感性を基に、真榮城氏が企画やコンセプト作りを行う。
「マーケットの動きを分析しても、時代の変化を捉えるのは容易ではありません。“左脳”(ロジック)で考えるよりも、“右脳”(感性)で時代の移ろいを敏感に捉える方が、より『行きたい』と思ってもらえる空間が出来上がるのです」(真榮城氏)
ドラミートウキョウは、先ほど紹介した「SLOTH」の他にも、訪れる人の感性に訴え掛けるさまざまな空間を企画・デザインしている。
その一つが21年5月、渋谷の宮益坂で開業した「クリニックTEN」である。「スムーズな体験で医療をもっと身近に」というコンセプトのこのクリニックは、JR渋谷駅から徒歩0分とロケーションが良いだけでなく、「待ち時間の長さ」「診療時間の短さ」を解消するため、スマートフォンアプリを使って事前問診を行い、来院後すぐ診察室に入れる仕組みを採用。その診察室も、医師とゆったり対話ができるように、茶室のような空間をデザインした。
真にリアルとデジタルが融合した
OMOを実現するプレーヤー
LMIグループの躍進について伺うと長森氏はこう分析した。
「これまでもZ世代の台頭などで、消費行動の変容は注目されていました。しかし、小売業はリアルな場と体験に強くひも付く業態であることも影響し、遅々としてDXは進んでこなかったのです。そんな状況の中のコロナ禍で、経済全体が大きな打撃を受けましたが、その中でもリテールへの影響はとりわけ大きく、黒船襲来のごとく外部環境の変化によって変革の必要性に強く迫られています」
もちろん小売りのプレーヤーたちもテックベンチャーと手を組むなどし、さまざまな施策を試しているがなかなかリアルとデジタルを掛け合わせた購買体験の創出、いわゆる「OMO」の実現には至っていないのが現状だ。