戦争は需要を生む
懸念はエネルギー問題
戦争は工業製品を中心に様々な需要を生み出す。一方で戦争による最大のダメージは人命が失われることだが、現代の戦争においてはかつてのようには大量の死者というのは発生しにくい。それが相手国の人命であっても、大量の死には現代の政権は耐えられないのだ。
こういった理由からウクライナ情勢を受けた市場への打撃は、限定的なものになると予想される。足元はボラティリティが高いため売りが優勢になっているが、多くの投資家は「最終的には市場は大荒れしない」と考え、どこまで下落すれば買いを入れるべきかを見極めているはずだ。
世界的な金融緩和を受けて、投資マネーは「じゃぶじゃぶ」な状態が続く。投資家は何かにお金を投資せざるを得ない。現時点では、短期債などにお金を待機させるパーキング的な投資が選ばれやすいだろうが、投資家は押し目買い(相場が下がる調整局面をねらって、買いを入れること)のタイミングを狙うだろう。
まつもと・おおき/1963年埼玉県生まれ。ソロモン・ブラザーズ・アジア証券、ゴールドマン・サックス証券を経て、99年マネックス証券設立。米MasterCard Incorporated 社外取締役。著書に『私の仕事術』(講談社)、『お金という人生の呪縛について』(幻冬舎)などがある。 Photo by Yoshihisa Wadaただ、これまでの有事の局面と今回の問題とでは、大きな違いがひとつある。ESG投資などの流れを受け、産業革命以来の文明を支えてきた火力発電が減らされたり、原子力発電が止まったりし、世界的にエネルギーに対して「弱く」なっていることだ。これがエネルギー価格の上昇とグローバルインフレを招いていたのだが、そこに今回のウクライナ問題が重なった。すでに原油相場は高騰しているし、欧州への天然ガス供給も不安視されている。
このエネルギー要因から、ウクライナ情勢を受けてさらにインフレ懸念が高まる。
難しいのは、米連邦準備理事会(FRB)がこの局面をどう判断するかだ。基本的にはインフレを止めるために金利を上げるというのが金融政策の考え方。だが、ただでさえ金利を上げれば株が下がるのに、さらに株価を下押しするウクライナ問題が重なっている中では判断が難しい。そもそも、こういう地政学的理由でエネルギー価格が上がっている場合は、金利を上げても上昇は止まらない。
また気になるのは中国だ。中国がウクライナ情勢について、何らかの姿勢を示すのか。経済制裁を受けた際に、ロシア経済が崩壊を回避できるかどうかは、中国からどれだけ支援を受けられるかに左右される。経済制裁で西側主要国との交易が難しくなっても、中国が他の国との交易量を減らしてでもロシアとの交易を優先などすれば、制裁の打撃はかなり小さくなる。こういう行動を取る可能性を中国が示唆するだけで、世界は大騒ぎになる。
個人的には中国はことを荒立てず、あくまで陰ながらロシアを支援する姿勢を取ると予想しているが、不確定要因として中国の動きは気になるところだ。



