下斗米伸夫教授ソ連崩壊30年をテーマに、2021年12月に日本記者クラブで会見した下斗米伸夫・神奈川大学特別招聘教授/法政大学名誉教授 Photo:JIJI

 ウクライナ情勢の緊迫が続いている。欧州の一員を目指すウクライナ政府を支援する米英仏独を中心にしたNATO(北大西洋条約機構) と、反発するロシアの対決姿勢も強まるばかりだ。ロシアによる「クリミア併合」から8年、なぜいまウクライナ問題が再燃したのか。ロシアの軍事侵攻はあるか。鍵を握るプーチン大統領は何を目指しているのか――。ロシア政治研究の第一者である下斗米伸夫・神奈川大学特別招聘教授/法政大学名誉教授は、冷戦終焉から30年を経て、ウクライナを舞台に米国とロシアによる核管理とヨーロッパの安全保障を含めた国際秩序の作り直しが始まっているとみる。その過程では軍事衝突の可能性も否定できないという。ウクライナ問題の本質と行方を、下斗米教授に2回にわたって聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)

冷戦終焉から30年 米ロの新秩序作り
ロシア軍派遣で米国の本気度試す

――ウクライナの情勢をどう見ていますか。2014年2月にロシアによる「クリミア併合」が起きましたが、その後、ミンスク合意(15年)でウクライナとロシアは折り合ったはずです。いま何が起きているのでしょうか。

 この問題は、表向きはEUに向かおうとするウクライナと、それを止めたいロシアの対立だが、大きな構図で見れば、米中対立のなか、米国とロシアによる、グローバルな核管理や欧州安全保障を含めた国際秩序の作り直しが始まったと思っている。