首都圏の不動産再生のノウハウを地方に生かす

 リオ・ホールディングスの中で、資産運用コンサルティングや再生コンサルティングを手掛けるリオ・コンサルティングが今、力を入れているのが地方における不動産再生事業。同社の小杉裕康社長はそのいきさつをこう語る。

リオ・コンサルティング小杉裕康代表取締役

「東日本大震災前までは首都圏や大都市圏を中心にさまざまなジャンルのコンサルを行っていました。中でも多く手掛けたのは、所有する不動産の収益が低下したことで経営が悪化し、資金繰りに窮して危機的な状況に追い込まれたケースです。あらゆる手段を駆使してこれらを再生し、“不動産の収益を増やす”という難しい課題を解決できたという経験を積んだことが当社の強みになりました」

 首都圏・大都市圏の不動産市況は、04年から07年前後の不動産ファンドバブルとともに改善に向かい再生のニーズは減少したが、地方都市は依然として苦戦が続いていた。

「そこに東日本大震災が起こり、特に東北地方が打撃を受けました。東北の再生には、当社が築いてきた再生ノウハウが生かせるのではないかと考え、地方展開がスタートしたのです」

全国に100棟以上の
リノベーションビルを運営

 震災の影響をあまり受けなかった地方都市でも「状況は同じ」と小杉社長。1970~80年代にかけて、人口増加と経済成長に導かれるように商用不動産が多く造られた。今、人口は減少に向かい、築40年、50年となった建物は魅力を失い、収益低下が進んでしまった。しかし、建物の所有者には建て直す体力はなく都市の中心市街地に老朽化した建物が取り残されたり、コインパーキングに変わったりしており、経済発展の基盤が失われつつあるという。

「しかし、衰退が加速する前に建物をリノベーションして再生することで、国が推進するスマートシティ化に一役買いたいと考えています」(小杉社長)

 また、地方の不動産は、資産家のリスク分散やタックスプランニング上有効であるという利点もあることから、首都圏の顧客の投資対象となっている。それは結果として、富裕層の資金を地方の活性化に生かすことにつながった。

 もちろんそこには、同社の社員たちの努力があったことも忘れてはならない。地域に足繁く通い、改修工事に関する検討を重ねたり、テナント誘致のための営業活動や日々の運用管理にあたったりという実働が伴ってこそ実現できたといえるのだ。

「クライアントの多くが過去来、金融機関からのご相談・ご紹介を通じて取引に至っている」(小杉社長)という。

 また、同社は、首都圏・大都市圏以外に、東北、北関東、近畿、四国、九州に100棟以上のリノベーションビルを運営、リノベーション後の物件の稼働率は平均90%前後で推移しており、地方の再生に貢献している。その新たな例が、福岡県久留米市の西鉄久留米駅前の商業ビルの再生。地元百貨店が撤退した商業ビルを20年に取得し、約1年かけてオフィスビルに改装、「FLAG KURUME(フラッグ クルメ)」として再スタートさせた。地の利が良いため、1階はスーパー、2階以上は学習塾やクリニック、生損保の支社などのテナントで埋まり、駅周辺が活性化された。