環境変化の激しさが増大する一方、ビジネス活動の状況は把握しづらいものになっている。バリューチェーンは複雑化しており、サブスクリプションなど新たなビジネスモデルを手掛ける企業も増えた。マネジメントの難易度は、以前とは比較にならないほど高まっている。データアナリティクスによって、未来を予測し、変化への動的管理を行い、中長期にわたる企業の全体最適を導く「次世代EPM(Enterprise Performance Management)」が、いま注目されている。
VUCA時代の環境変化と
高まるマネジメントの難易度
激しい環境変化が常態といわれ、VUCA時代注)とも評される現代。ビジネスの前提条件すら変わってしまう。外部環境だけでなく、企業のビジネス活動の中身も、ここ十数年の間に大きな変化をたどってきた。企業のバリューチェーンは、グローバル化の進展やマーケットの進化により複雑化しており、その全体像を把握するのは容易ではない。
寺坂和泰
KAZUHIRO TERASAKA 2010年5月、野村総合研究所入社。グローバルサプライチェーン戦略立案からロジスティックス現場改革、グローバル収益管理システム構築など変革プロジェクトを多数経験。現在、デジタルプラットフォームを活用した経営改革やオペレーション最適化を推進するビジネスプラットフォームグループ マネージャー。主な論文に、「グローバルオペレーションの確立の方法論と要点」(『知識資産創造』2015年5月号)がある。
長く伸びたバリューチェーンのどこか一カ所に綻びがあれば、世界各地の生産や販売活動にマイナスの影響を及ぼし、その影響範囲も広がっている。半導体不足やサイバー攻撃の問題など、その種のニュースを耳にする機会が増えている。
また、ビジネスモデルの多様化も進んでいる。野村総合研究所(NRI)の寺坂和泰氏が指摘する。
「たとえば、『モノ売り』と『コト売り』を同時に手掛ける企業は増えつつあります。以前の製造業は『モノを売って終わり』という感覚だったかもしれませんが、いまでは売った後のサービスが重視されるようになりました。また、サブスクリプションビジネスに取り組む企業も増えています。多様なビジネスモデルをマネジメントすることは当然難易度が高くなります」
B/S観点もある。これまでは単年度のP/L管理でも対応できていたかもしれない。しかし、現代の環境変化に対応するためには、中長期視点で「稼げる資産」を構築する必要がある。そのポイントとしては、事業の収益性・成長性を適切に評価し、資本を集中投下していく必要がある。
「たとえば、デジタル時代においては、蓄積した膨大なデータの活用、消費者の変化に合わせてパーソナライズ可能なデジタルプラットフォームへの成熟化が求められています。それには時間と投資が必要となります」(寺坂氏)
注)激動し(Volatility)、不確実(Uncertainty)かつ複雑(Complexity)で、曖昧さ(Ambiguity)を増している社会・経済情勢。