予測や動的な仕組みとしての
次世代EPMソリューション

 従来型のEPMソリューションは静的な特性を持ち、激しい環境変化に対して柔軟に対応するには限界があった。変化を柔軟に受け止め、日々の意思決定を支援するのが、動的なEPM=次世代EPMソリューションだ。

 財務的にはROIC(Return On Invested Capital)を重視し、短期・中長期でバランスの取れた経営、全体最適に資する経営をサポートする。日本企業はすでにERPやSCM、CRMなどさまざまなシステムを運用して、膨大なデータを蓄積している。こうしたデータを日々の計画・実行や経営の意思決定などに活用することで、次世代EPMは全体最適かつ短期・中長期視点をバランスさせた経営をサポートする。

「多種多様なデータを集めたデータウェアハウスを構築し、そこに蓄積された実績や計画などのデータを分析して現場の日々のアクション、経営判断などに活用する。次世代EPMによって、このようなデータドリブン経営を実現することができます。体系化・整理されたデータウェアハウス基盤の上で、原単位管理の最適化や短期的な計画・予測、中長期の戦略シミュレーションなどができるのです」と、寺坂氏は話す。

複雑化するバリューチェーン、ビジネスモデルに伴う難題の最適解を導くために野村総合研究所 経営DXコンサルティング部 ビジネスプラットフォームグループ
秋葉美穂
MIHO AKIBA
2011年入社。経営管理、データ活用基盤構築、プロセス標準化、基幹システム導入において多数のプロジェクトを経験。構想策定~プロセス/基盤構築まで幅広くプロジェクトを支援。現在、経営DXコンサルティング部シニアコンサルタントとして、EPMソリューションを提供。

 データによってビジネス活動を徹底的に可視化するとともに、多角的なシミュレーションを通じて企業の将来の姿を照らす。次世代EPMは「経営におけるデジタルツイン」ということもできるだろう。

 EPMの考え方を取り入れている日本企業は少なくない。しかし、従来型のEPMと次世代EPMとは「前提」「計画策定」「実行・推進」という3つのレベルで大きな違いがある(図表を参照)。NRIの秋葉美穂氏が説明する。

「静的・動的という観点で見るとわかりやすいかもしれません。たとえば、全社目標に沿って各事業部の予算などの目標値が決まり、その実現に向けて工場の生産能力拡張や調達先変更などを検討する、といった取り組みは多くの企業で行われています。こうしたやり方は固定的な計画を前提としており、静的なEPMといえるでしょう。これに対し、動的なEPM=次世代EPMは変更を織り込んだ計画が前提。複数のシナリオでシミュレーションし、売上げ・利益などへの影響を即座に把握したうえで、そのつど、最適なシナリオを選び直すというアプローチです」