財務指標としてROICを重視し
短期・中長期のバランスを取る

 次世代EPMは、単年度の業績だけでなく中長期のそれも重視する。財務指標としてはROICの管理がポイント。ROICには収益率と資本の効率性、つまり単年度と中長期両方の視点が反映されている。

「モノの販売とサービスの両方を手掛けている企業の場合、単年度視点のP/Lだけではマネジメントの質を維持することは難しい。P/Lと合わせて、どこに投資をしたのか、投資によって形成された資産をどの程度有効活用しているのかを評価するためには、B/S視点を反映したROICが適しています。ROICは収益性指標としての単年度管理と投資効率性指標としての中長期管理にバランスよく目配りするための指標です」(秋葉氏)

 経営者をしばしば悩ませるのが、単年度と中長期のトレードオフだろう。次世代EPMは客観的なデータを根拠に、投資をはじめ各種施策の優先度の判断をサポートする。

 トレードオフは各国間・部門間などにも起こりがちだが、ここでも次世代EPMは全体最適に資する計画策定・実行に役立つ。全体最適、短期・中長期でバランスの取れた最適解を求める企業にとって、次世代EPMは大きな力になるだろう。

 次世代EPMにおいてデータの質は極めて重要。その質を維持向上させるためのプロセスを組織内に確立する必要がある。そしてデータを用いて自社のビジネス特性を反映した数理モデルを構築し、その精度を高めるための取り組みも欠かせない。

「たとえば、X・Y・Zという3つの製品をつくる時、どのような順番でリソースを配分するのか、どの販売拠点に製品を届け、在庫をどの程度持つのか。こうしたビジネス特性に加えて、顧客ニーズのとらえ方などを含めてアルゴリズム化したものが数理モデルです。競合状況などを含む環境変化に合わせて数理モデルは進化する。仮に環境変化がなかったとしても常にブラッシュアップする努力が求められます」(寺坂氏)

大きな環境変化を背景に
高まる次世代EPMへの関心

 以上をまとめると、次世代EPMの柱は、予測・動的な管理、短期・中長期および各国・部門のバランスの取れた最適化を目指す指標、自社のビジネス特性に合致した数理モデルの3つ。これらを支える体系化・整備されたデータウェアハウスの構築は必須である。

「複数シナリオを同時並行で回しながら、各部門はKPI達成を目指します。たとえば需要予測や為替、輸送費など多くの条件を変えながらいくつものシナリオについてのシミュレーションを行い、最適なパターンを選択して実行する。このような複雑な検証を手作業で行うのはほぼ不可能です。環境変化の激しい中で、次世代EPMのような仕組みは必須と考えます。世界を見渡しても、事業活動全体をカバーする次世代EPMはまだ存在しません。ただ、部分的に次世代EPMを実装している先進企業は増えており、当社もその種のプロジェクトを数多く手掛けてきました。私たちは日本企業と一緒により包括的な次世代EPMの実装に取り組みたいと考えており、意欲的なお客様から問い合わせを受ける機会も増えています」(寺坂氏)

 次世代EPMソリューションを提供するうえで、NRIは3つの強みを持つと寺坂氏は言う。

「第1に、幅広い業界でのコンサルティングおよびシステムインテグレーションを通じて蓄積した経験と知見。当社は各業界の特性や習慣などに精通するエキスパートを多数擁しています。第2に根拠をロジカルに積み上げて将来シナリオを描き、必要なアクションにつなげるノウハウ。第3にプロジェクトの途上にある障壁をクリアしながら、あるべき姿に向けて着実に前進するための提案力や実行力。理想論だけでは次世代EPMプロジェクトを成功に導くことは難しいでしょう。困難を伴う企業変革をサポートした豊富な経験をベースに、私たちは現実的かつ実践的なご提案・ご支援を行うことができます」

 短期・中長期のバランスを取りつつ、各国・各部門、複数のビジネスモデルを、全体最適視点で統合的に支援する次世代EPM。

 NRIは、そのソリューションを顧客とのコラボレーションを通じて磨き続けている。

制作|ダイヤモンド社ブランドコンテンツチーム

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