また、昨年の需給調整市場の開設からより詳細なデータへのニーズが高まる電力市場向けには、需要予測や太陽光や風力の発電量予測を行うために必要な気象情報を電力会社に販売しています。
ドローンの安全航行のためにもそうした雨風のデータは不可欠ですし、停電リスクの把握、熱中症対策への活用など、事業に合わせたさまざまな活用例が存在します。ほかにも、天気連動広告では、天気に連動したクーポンの発行なども実現しています。
自然は刻一刻と変化し続けるものですので、観測データは膨大なものになります。技術革新の速度にもよりますが、それらをうまく活用して、100年単位での天候を予測することができれば、保険商品のリスク判断にも使えるでしょう。
つまり気象ビッグデータを活用するためには、AI、ディープラーニング、機械処理などの最先端技術が必要になります。当然、データを扱うのですから大容量の記録媒体は必須です。私たちはこれまで、ストレージコストを考えて過去データはオフラインで保存するか、廃棄していました。昨日の天気予報を知りたくなることなどないと考えていたからです。
しかし最近はそうした過去の気象データの需要が増えてきました。その膨大なデータから何らかの道を見出そうという企業が増えてきたのです。そこでウェザーテックではまず、過去データを提供するサービスから始めたのです。
──ウェザーテックで提供する天気予報の精度を高めるために、どのようなことを行っているのでしょうか。
西 基本的には観測地点の多さに、精度は左右されると思います。現在気象庁は観測装置「アメダス」を全国に1300カ所設置していますが、ウェザーニューズ社はその10倍に当たる1万3000カ所のデータを収集しています。
さらにアプリ「ウェザーニュース」のサポーターによる1日約2万通の写真投稿、18万通の天気報告があります。そうした圧倒的な観測網により精度を高めているのです。さらに通常は5kmメッシュの予測ですが、業界最高解像度1kmメッシュの細かさでの気象予測がウェザーテックで可能になっています。
──気象ビッグデータを運用するためには、やはりコンピューターの進化が鍵になると思いますが、キオクシアはどのような技術で進化を加速させているのでしょうか。
濱田 キオクシア(記憶+アクシア※ギリシャ語で価値)という社名には、人や社会が発するデータを記憶し、活用することで価値を生み出していきたいという思いがこめられています。それが“「記憶」で世界をおもしろくする”というキオクシアのミッションのもつ意味です。
私たちは1987年にNAND型フラッシュメモリを発明しました。小型で、電源を落としてもデータが消えず(不揮発性)、読み書きのスピードが速いという特徴を生かし、デジタルカメラやオーディオプレイヤー、スマートフォン、PCなどの記憶媒体として採用されたのをきっかけに爆発的に普及しました。