このように、常に時代に先駆ける取り組みを行ってきた3Mは、2018年に「戦略的サステナビリティフレームワーク」を発表する。「Science for Circular」(サイエンスで循環型経済に貢献)、「Science for Climate」(サイエンスで気候変動の課題を解決)、「Science for Community」(サイエンスでコミュニティに貢献)の3領域において、数多くのゴールと目標値を設定し、その達成に向けたさまざまな取り組みを開始したのである。
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このうち、「Science for Circular」の取り組みの一つとして注目したいのが、「サステナビリティ・バリュー・コミットメント」(SVC)である。これは、2019年以降に開発をスタートさせた新製品について、サステナビリティにどのような価値をもたらすのか、社会的大義のためにどのようなインパクトを起こせるのかを必ず説明するというコミットメントだ。
「2019年以降、サステナビリティに貢献しない製品は、どんなに機能や性能が優れていても開発をしていません。これは、お客さまから見れば、『3Mの製品を選べば、その製品はサステナビリティに関する何らかの貢献をしている』ということです。3Mは、再生可能エネルギー使用率を50%以上とする目標を2年前倒しで達成するなど、サステナビリティ活動で着実な成果を上げていますが、自社の活動だけでなく、製品をサステナブルにすることでお客さまの活動も支援していきたいと考えているのです」(永野部長)
3MはSVCを導入する以前からサステナブルな製品を世に送り続けており、同社の製品をユーザーが使用した結果、2015年から22年までに累計1億2000万トンものCO2に相当する排出が削減されたという。「2050年までには、累計2億5000万トンの排出削減に貢献したい」と永野部長は語る。
「サイエンスの力」で、メガトレンドに対応する製品を作る
サステナブルな価値を持った製品作りを支えているのは、3Mの競争力の根幹ともいえる「サイエンスの力」である。産業用の研磨財や接着剤から、医療用製品、文具や日用品まで、数多くの製品を開発してきた3Mには、それらを生み出してきた広範な基盤技術が蓄積されている。
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同社はこの基盤技術の体系を、「3Mテクノロジープラットフォーム」と呼んでいる。「『研磨材』や『接着・接合』『不織布』など、全部で51ある基盤技術をより深めたり、二つ以上の技術を組み合わせたりすることで、さまざまな製品が開発できます。例えば、『接着・接合』の技術は、用途ごとの改良を加えることで産業用の両面テープや医療用テープ、ポスト・イットなどに使われていますし、『研磨材』『接着・接合』『不織布』の三つの基盤技術を組み合わせると、キッチンスポンジが作れます」(永野部長)。
産業用の製品では、基盤技術の深化や組み合わせによって、顧客ごとの細かなニーズに応じたカスタマイズも行っている。柔軟な製品作りができるのは、豊富な基盤技術を持っているからであり、基盤技術の一つ一つが、長年の研究・開発によって培われた「サイエンス」の塊なのである。