進む、茨城県の
半導体関連企業の集積

 茨城県はもともと半導体関連企業が集積していることに加えて、首都圏に近いことや交通インフラ、優遇制度などの事業環境が評価され、さらなる集積が進んでいる。県南・県西地域ではキヤノンや日本テキサス・インスツルメンツの拠点に加え、近年では台湾のTSMCがつくば市の産業技術総合研究所内に研究拠点を開設。

 県北・県央地域ではルネサスエレクトロニクス、日立ハイテクやレゾナックなど国内有数の半導体関連企業の拠点が集積している。

 もともと茨城県では、県の持続的な発展のために、半導体や次世代自動車など今後大きな成長が期待できる産業や本社機能の誘致が重要であると考えていた。そのため立地の優位性や県独自の優遇制度をPRしつつ、戦略的な誘致活動に取り組んできたという経緯がある。

JX金属が、常陸那珂地区に新工場の建設を決定した(完成イメージ)

 22年には、半導体の配線材料となるスパッタリングターゲットで世界トップクラスのシェアを誇るJX金属が、ひたちなか市にある「常陸那珂工業団地」の隣接地に、同社の先端素材分野における最大規模の投資となる新工場の建設を決定した。現在同団地では、複数企業から産業用地取得の要望があることから、新たに「第1期拡張地区」(分譲面積約22ヘクタール)「第2期拡張地区」(同約34ヘクタール)の開発が始まっている。

 常陸那珂工業団地では、税制の優遇制度(国税・県税・市税)に加えて、電気料金の支払い実績などに応じた補助金(8年間)や契約電力に応じた給付金(毎年)があり、電力消費の多い半導体関連企業の工場にとってはメリットの大きい立地条件になっている。

企業立地事例 1ルネサスエレクトロニクス

マイコン製造能力を増強した主力工場

ルネサス セミコンダクタ マニュファクチュアリング
小澤英彦 代表取締役社長

 ひたちなか市のルネサスエレクトロニクスの那珂工場は、半導体前工程製造事業を担う同社有数の製造拠点だ。半導体前工程とはウエハーと呼ばれるシリコン基板の上に集積回路を作り込む工程。那珂工場は200ミリメートルウエハーを用いるN2ラインと300ミリメートルウエハーを用いるN3ラインの二つの半導体前工程製造ラインを有する。ルネサスの前工程各工場を統括するルネサス セミコンダクタ マニュファクチュアリングの小澤英彦社長は、半導体需要を背景に設備投資にも積極的。那珂工場も「2021年、22年に投資をして製造能力を増強した」と話す。

那珂工場は車載用マイコンなど、マイコンの中核工場として発展させていく計画だ

 

 ひたちなか市は、整備された高速道路網や国道を活用したスムーズな物流はもちろん、人のアクセスも良いと小澤社長は評価する。東京とひたちなか市はJR常磐線特急で結ばれており、海外からの顧客は成田空港から直通バスで2時間ほど。茨城空港もあり、「国内のお客さまも海外のお客さまもアクセスしやすい」。さらに、ひたちなか市をはじめ茨城県には、優れた技術を有した地場企業があまたある。小澤社長は、「県から地場企業の紹介を受けたり、逆に私どもの仕事を紹介してコラボレーションが実現するよう活動しています」。

 

 県、茨城大学、茨城高専(茨城工業高等専門学校)は次世代の人材育成に取り組んでいる。

「そこに私どももコラボさせていただき、出前授業やインターンの受け入れを行っています」。同社は地域貢献を通じて茨城県全体の発展に寄与している。