社会課題解決に向き合いながら、経済活動も回していく
――宮城さんは、PwCコンサルティングが社会課題の解決を目指して設けた部門横断型組織、Social Impact Initiative(以下、SII)の立ち上げを担当したそうですね。これはどのような組織でしょうか。
宮城 社会課題解決に向き合いながら、経済活動も両立させていくという取り組みを部門横断で行う組織です。
SIIによる取り組み事例としては、宮城県女川町と一緒に進めているプロジェクトがあります。東日本大震災から10年かけて女川町が取り組んできた復興活動を整理し、どういう要素がそろえば社会的インパクトを創出できるのかというメカニズムを明らかにしていくものです。女川町の経験を基に社会的インパクト創出の「型化」を進め、他の自治体にも展開していく活動を行っています。
――安井さんも、岡山で社会課題の解決に関わっておられたそうですね。
安井 私は岡山で生まれ育ったこともあり、地元の社会課題解決に貢献したいという思いから岡山に移住し、地域共創の取り組みを進めてきました。
PwCコンサルティング 代表執行役CEO
一つの専門性やプレーヤーだけでは地域が抱えるマクロな課題は解決できませんので、岡山では地域における信頼性やネットワークに長けた地域金融機関をハブとした産官学金連携の支援を行いました。
具体的には、地域金融機関が地場のコンサルティング会社を創設する支援を行い、金融機関(B)→コンサルティング会社(B)→企業・自治体(X)というB to B to Xの形で、中小企業の生産性向上など、地元において持続的に課題が解決され続ける「型化」を行いました。こうした「型化」を参考にしていただきながら、全国に経営課題や社会課題を解決するモデルが広がっていくといいなと思っています。
また、岡山県玉野市では、遺伝子関連検査結果を活用して健康増進の実現を目指す住民医療改革を進めています。
地方医療は、高齢者が多い一方で、健康診断の受診率が低く、結果的に罹患率が増えて医療費が高止まりするという課題を抱えています。この解決の鍵を握るのは「ゲノム」ではないかと考え、健康診断を受けるときに、一緒にゲノム解析を行える仕組みを取り入れたのです。疾患の原因の半分は生活習慣ですが、残りの半分は遺伝的要素で決まるといわれています。そこで、健康診断にゲノム解析を組み合わせれば、遺伝的になりやすい病気が分かり、受診率も上がると考えたのです。
ただし、実際に行うのは簡単ではなく、市や大学病院、地域医療センターなど、さまざまな組織のサポートが必要になります。しかも、補助金や市の財政だけに頼らず実現できる仕組みを作ろうとすると、民間企業を呼び込む必要があります。結果的に、民間企業も含めてお金やノウハウなどをサポートしてくれる強力な座組ができたことが大きかったと思っています。これもクライアントと一緒に社会課題を解決した事例の一つです。