社会的インパクトを増幅させるChief Impact Officerを設置

――御社による経営課題や社会課題を解決する支援は、他のコンサルティングファームと何が違うのでしょうか。

安井 違いは三つあると思います。まず、PwC Japanグループの中には、さまざまな経験や知見を持った人材が存在します。例えば、PwCコンサルティングにはシンクタンク部門であるPwC Intelligenceがあります。社会のマクロ分析を行っているので、世の中の動きがどうなっているのかを正しく理解した上で、経営課題や社会課題の設定ができます。

 二つ目に、PwCコンサルティングには組織横断型イニシアチブがあり、経営課題や社会課題の解決に大きく寄与することができます。例えば、ヘルスケア領域ですと、ヘルスケアビジネスに参入したいテクノロジー企業や自動車部品メーカーといった異業種の企業と、医薬品や医療機器のメーカーとの間を取り持つような活動を行っています。

 このように、クライアントがすでに属している業界以外の知見を提供しながら、業界をまたぐ課題を解決する支援ができます。現在、当社には、半導体や宇宙・空間産業、スマートモビリティ、グリーントランスフォーメーションなど、18テーマの組織横断型イニシアチブがあります。

 三つ目は、人材そのものの力です。社会課題解決は、道のりがとても長く、困難な取り組みですが、当社の人材は非常に熱いハートを持っているので、クライアントがくじけそうになっても、一緒になって少しでも活動がうまくいくよう支えることができます。これも、私たちの大きな強みだと思います。

宮城 クライアントから与えられた課題を整理し、そこから解決策を提示するのが一般的なコンサルティングの流れだと思いますが、当社は、コンサルタント自身がどういう世界を創りたいのかという考えを踏まえてクライアントに提案することができます。これが大きな強みではないかと思います。

――今後、御社としては、経営課題と社会課題の解決にどのように取り組んでいくお考えですか。

安井 当社が正しいと信じていること、やろうとしていることを、継続的にできるような仕掛け作りが急務だと思っています。

 その一つとして、2024年7月からChief Impact Officer(CIMO)を設けます。PwCコンサルティングでは、クライアントワークはもちろん、プロボノ(職業上のスキルや経験を生かした社会貢献活動)など経営課題や社会課題の解決のためのさまざまな取り組みが行われています。それらをもっと有機的に組み合わせて、当社全体として正しく動けるようにすることが重要です。CIMOはその推進役を担うことになります。

 もう一つ、私たちがやるべきこととして考えているのは「インパクトファースト」を目指す企業の創出支援です。社会課題解決にまつわるエコシステムの中には、企業のように「ファイナンスファースト」(財務優先)の参加者もいれば、NPO のように「インパクトオンリー」(社会的影響のみ)を追求する参加者もいます。両者の間に立つような「インパクトファースト」(財務も考慮するが、社会的インパクトを優先)の企業群を育てていきたいです。PwCコンサルティングという枠を超え、社会課題の解決に向けてインパクトを創出するエコシステム作りに貢献していきます。

宮城 コンサルティングファームならではのやり方で社会的インパクトをいかに最大化させるかということが、当社にとっての大きなチャレンジだと思います。ここ数年の活動を通じて、そうした取り組みをリードしていける若手の人材も育っているので、社内のメンバーを束ねながら社会的インパクトの最大化に向けて活動を続けていきます。

――経営課題と社会課題の解決に向けたPwCコンサルティングの取り組みがよく分かりました。ありがとうございました。

社会課題解決が生む経済インパクト――経営課題の先にある社会課題にまで挑むPwCコンサルティング代表執行役CEOの安井正樹氏(左)と常務執行役の宮城隆之氏(役職はいずれも2024年7月1日就任)
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