日本の経営者の約7割は「10年後には、自分たちのビジネスは存続できない」という危機感を抱いている、との調査結果がある。そのため、多くの企業が「ビジネスモデル変革」を試みているが、なかなかうまくいっていないのが実情だ。どうすれば変革を成功させることができるのか。PwCコンサルティング代表執行役CEO(2024年7月1日就任)の安井正樹氏と、同社でBusiness model reinvention(ビジネスモデル再発明)支援の取り組みをリードする濱田隆氏に、「週刊ダイヤモンド」元編集長の深澤献が聞いた。

「変わらなければ」と思っていても変われない理由

――今、日本企業の多くが企業変革に取り組んでいます。中でも重要なテーマの一つが、収益性の核心となる「ビジネスモデル変革」だと思います。こうした変革が求められている背景には、何があるとお考えですか。

安井 PwCでは毎年1回、「世界CEO意識調査」というグローバルの経営者の意識調査を行っています。2023年の調査結果で興味深かったのは「現在のビジネスのやり方で自社が何年存続できると思うか」という問いに対し、約7割の日本人経営者が「10年未満」と回答していることです。この結果を見ても、日本の経営者は「今のビジネスモデルを変革しないと生き残っていけない」という危機感を抱いていることが分かります。

――「ビジネスモデルの変革が必要」とはよくいわれますが、成功している企業はそれほど多くありません。原因は何でしょうか。

安井 まず、ビジネスを取り巻く環境が劇的に変化していることが大きいでしょう。「今、何が起こっているのか」をしっかりと捉えて対応していく必要があるのですが、分かっていても対処が難しい課題が非常に多いのです。

 一つの例が、人口動態の急激な変化です。かつては、人口増加によって需要が増え続け、それに対応して製品・サービスをどう供給していくかを考えることが、経済の原理原則でした。ひと言で言えば、「モノを作れば売れた時代」です。現在は、このバランスが完全に逆転しています。人口が減少し、需要が著しく減っているので、それに合わせて供給を調整するしかありません。しかし、言うはやすく行うは難しで、実際にはどうやって調整するかが大きな問題となっているのです。

 他にも、消費者の意識の多様化、テクノロジーの進歩など、ビジネスを取り巻く環境にはさまざまな変化が起こっています。まずは「今、起こっていること」をきちんと捉えることが重要です。