イノベーションが生み出された土地の歴史を背景に
「そこに行く理由」を喚起する
近藤 慎氏
Convention Centerの運営に関しては、国際会議誘致・施設運営のパートナーとして、コングレが参画している。同社は、G7(先進7カ国)サミットをはじめ国際会議とMICE施設の企画・運営の実績を数多く持つ会社で、Convention Centerの構想段階から企画に参加している。
コングレのMICE開発事業部の近藤慎氏は、「都心のこれほどの立地で国際会議を開催できる規模の施設はほかになく、きっと集客力のある素晴らしい施設になります。パートナーとして参画できたのは幸運なことでした」と話す。
「私たちはMICEについて、開催されるごとに地域をアップデートしていくものだと考えています。そもそもMICEは、開催地に大きな経済波及効果をもたらすことをはじめ、その開催を契機に交通インフラの整備や自然環境の改善、海外との共同研究の促進や国際交流、新しいビジネスパートナーとの出会いやネットワークの構築など、幅広い関係者に中長期的な効果を生み出します。その効果をレガシー効果と呼んでおり、MICEは地域と密接に関わり、地域に貢献することを念頭に開催されるべきで、“街ごとMICE”は、これを最大化すると期待しています」
近藤氏は、MICE施設に求められることの変化について次のように説明する。
「新型コロナウイルス感染拡大時には、MICEはオンラインでの開催に一時シフトしましたが、今ではその“地域”に実際に足を運ぶことの価値、参加者同士の深いコミュニケーション、偶発的なコミュニケーションの価値が再認識されています。このように、短期間においても大きく常識が変わることは、将来にも起こり得ると考えられます。その中で、100年先の未来を見据えたまちづくりには、街と密接に関係を持ちながら、柔軟に形を変えて実施できる“街ごとMICE”の存在が効果的だと考えています」
会議場などのクローズドな環境で完結して、周囲には開催されていることすら認知されていないような国際会議も多く存在しているが、それらが街に染み出すことで、周囲の企業・団体へ、さらには地域、住民の皆さまへと浸透していく。地域性に起因するコミュニケーションが行われることで、クローズドな環境では不可能だった、新たなインプットが期待でき、その中だけで完結していたコンベンション自体も、地域とのリアルな交流で、新たなイノベーションを生み出す推進力を得てゆくと期待される。
近藤氏は、高輪という土地が持つ魅力もMICE開催にとって大きな意味を持つと言う。
「高輪というエリアは、150年前の明治期には高輪築堤(国史跡指定)を築き、日本初の鉄道が海の上を走った、日本と西洋の技術を掛け合わせたイノベーションを生み出した場所です。このような歴史的背景とともに、東京国際空港へのアクセス、将来的にはリニア中央新幹線の開通など、将来への期待が集まる、稀有なエリアです」
もともと山手線の駅に直結しているという強力な“引き”があり、立地の良さは大きな武器となる。Convention Centerはあらゆる形態のMICE開催が可能で、かつエリア全体の可能性を広げるトリガーとしても期待されている。
JR東日本では、新たなビジネス・文化が生まれ続ける国際交流拠点というコンセプトを掲げ、TAKANAWA GATEWAY CITYを“100年先の心豊かなくらしのための実験場”と位置付けている。100社以上のスタートアップ企業を支援する「TAKANAWA GATEWAY Link Scholars’Hub」の設置や、循環型ゼロカーボンのまちづくり、人とロボットの共生社会の実現や、最先端のヘルスケアサービスの導入、国内外のネットワークによるビジネス創造プログラムの開催など、広域スタートアップエコシステムの構築を目指している。
「ポストコロナ時代の、新しいMICEのイノベーションを起こしたい」と意気込む、久保田マネージャー。JR東日本、JR東日本ビルディング、コングレが三位一体となって取り組む、地域に開かれた次世代型のMICE施設は、まさに“実験場”にふさわしい挑戦であり、「そこに行く理由がある」と思わせる魅力にあふれている。