テック企業として飛躍、データを活用した新たなサービスも計画

 1986年の創業以来、カラオケ業界をけん引してきた同社には、不動産開発からサービスオペレーションに至るまで、リアルビジネスに関する長年のノウハウの蓄積がある。ここに新たに加わった強みがデジタルサービスのノウハウだ。顧客が求めるものをデジタルの力で実現していく姿は、もはやテック企業といっていいだろう。その中心には、今や30人規模のIT人材を抱えるまでに成長したデジタル部門の存在がある。「当社のデジタル部門はルーティン業務ではなく、日々新しいチャレンジを求められるので大変な面もありますが、新しいものを求める人にはエキサイティングな環境だと思います」(東原社長)。

 従業員が7000人規模の会社であるにもかかわらず、スタートアップ型のフラットな企業風土と豊富なリソース、稟議や根回しを一切排除した極めてスピーディーな意思決定力を武器に、同社は引き続きカラオケ体験を再定義しつつ、新たな事業を展開していく。

「カラオケ体験」で着目しているのがデータ活用だ。「すぐカラ」の普及で、かつて3%程度だった事前予約率は今や60%近くに達している。アプリユーザーが増えたことでさまざまな個人データが蓄積されており、「今後はそのデータを活用して、一人一人にカスタマイズされたサービスを次々に提供していきます」(東原社長)。

 また、今年8月にはオンラインカラオケアプリとして国内第2位のサービスである「KARASTA」をMIXIから買収。従来自社で手掛けていたアプリ「UTAO」との統合も今後実施し、オンラインとオフラインの垣根を越えた新しいカラオケ体験を提供する予定だ。

 さらに、驚くべきことに、同社の最大の強みともいえるスマホアプリを業界全体に開放することも考えているという。そんなことをすれば差別化ポイントが消えてしまい、サービスが横並びになってしまうように思えるが、東原社長はその先を見据えている。

「シンプルに顧客の利便性を考えると、当社だけで良いものを囲い込むのではなく、いろいろな会社でアプリが共通のインターフェースとして使える方が良いに決まっているし、質の高いアプリ・顧客体験が広まれば、業界全体の活性化にもつながり、顧客・当社・他社でWin-Win-Winの関係が築けます。将来的にはデータ分析や活用面についても業界全体で協力し合えればと考えています」(東原社長)

 この構想が実現すれば、テック企業としてさらなる飛躍を遂げることになるだろう。

 また、異業種の企業とタイアップし、カラオケルームを家具やアパレルなどの商品体験型ショールームとして活用する新しい試みや、京都駅前の土地を取得して現在建築中の総合エンターテインメントビル「Entertainment Hub Kyoto」プロジェクトも本格始動している。

 この他、飲食・スパ・不動産関連事業に加え、近年は特にデジタルエリアでの強みを生かした新規事業を次々と生み出しており、中でもギグワーカーを活用したアプリオーダーによる買い物代行サービス「HELP!」はコロナ禍を経て急成長している。

 社内で進行中のプロジェクトは数多くあるものの、人材が足りなくて進められていないものもかなりあるという。同社は足元でかつてないレベルでITと人材への投資を積極化。テック系を中心にさまざまなバックグラウンドの人材が近年、同社に続々と入社しており、まさに会社全体が「第2創業期」と呼ぶにふさわしい熱気に満ちている。

「ITエンジニアに限らず、新卒からCXOまで、どのレイヤーにおいても、優秀な人材を大募集しています。高い専門性やスキルがあれば新卒でも年収1000万円、中途採用では数千万円プレーヤーの採用実績も複数あります。直近ではTOAI社長の募集も始めました。見つかるかどうか分かりませんが、もし良い人が採用できて、今の私の仕事の半分でもその新社長にお任せすることができたら、私はもっと楽しいことだけに専念できるかなと(笑)」(東原社長)

 東原社長は最後に、こう話を締めくくった。

「他社と同じようなことを他社より少しうまくやって、売り上げや利益を最大化することにはあまり興味がないんです。デジタルを武器に、われわれTOAIにしかできないことを皆で楽しみながら追求し、まだ世の中にない新しい体験価値をどんどん生み出すことで、お客さまをもっと楽しませたい」

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