目標の達成に向けて
行動を変化させる

 最後のプログラムは、「人生の目的と働く目的が繋がることで、組織は強くなる」と題したパネルディスカッションである。

 健康経営を実践している埼玉県の産業廃棄物中間処理会社、石坂産業の石坂知子専務取締役と、千葉県の産業用機械メーカー、アシザワ・ファインテックの芦澤直太郎代表取締役会長、アクサ生命で健康経営エキスパートアドバイザーを務める瀬戸美紀氏が登壇。東京都市大学 教育開発機構の瀬戸久美子特任教授がモデレーターを務めた。

従業員の“生きがい”と“働きがい”を育み持続的に成長する組織へ「健康経営大会議」
従業員の“生きがい”と“働きがい”を育み持続的に成長する組織へ「健康経営大会議」東京都市大学 教育開発機構 特任教授
瀬戸 久美子
編集者、東京都市大学特任教授。早稲田大学在籍中に交換留学先の米国でジャーナリズムを学んだ後、日経BPで「日経ビジネス」記者や「日経WOMAN」「日経TRENDY」副編集長などを歴任。現在は経営者や社会起業家を中心に取材・執筆活動を行うほか、高等教育機関にて探究学習プログラムの開発などを手掛ける。2023年からはメディアリーダーとして「世界経済フォーラム年次総会」(ダボス会議)に参加し、23年には「Japan Night Davos」(ジャパン・ナイト)のMCも務めた。

 ディスカッションの最初のテーマは、「健康経営に取り組む経営者の思い」について。

「どんな共通項があるのか?」というモデレーターからの問いに対し、アクサ生命の瀬戸氏は「当社が約15万人の働く人を対象に行ったアンケート調査によると、『健康』『高い職業意識』『前向きな人生観』がある方は、生産性の高いことが分かりました」と解説した。

従業員の“生きがい”と“働きがい”を育み持続的に成長する組織へ「健康経営大会議」アクサ生命保険 HPM推進部 HPMビジネスエキスパート
瀬戸 美紀
1998年アクサ生命保険へ入社。健康経営エキスパートアドバイザーとして、健康経営の普及活動に努める。健康経営セミナーについては年間講演回数100回超、商工会議所共催セミナーをはじめ、日本経済新聞社主催の健康経営大会議へパネリストとして登壇。J-WAVEラジオ・地方ラジオ局・新聞社などメディアを通じて、広く普及することに努め、また健康経営実践企業のコンサルティングも行い、主に中小企業の支援に関わる。

 ポイントとなるのは、会社からの働き掛けによって社員の行動変容を促すこと。

「自分の目標やビジョンの達成に向けて、自発的に行動を変化させること。それが結果的に社員の生産性向上、ひいては企業の成長につながります」とアクサ生命の瀬戸氏は指摘した。

 続いて石坂氏と芦澤氏が、具体的にどんな健康経営を実践しているのかについて説明した。

 石坂産業では、16年に新卒採用と高度外国人材の採用を開始し、人材のダイバーシティ化を推進している。それに伴って、さまざまな健康経営のための施策を実施した。

「従来、トップダウンで決めていた福利厚生サービスは社員ニーズが低かったので、社員の声に耳を傾け、要望が高かった施策を積極的に導入しました」と石坂氏。その一つがマネーリテラシー教育の実践だ。

 安心して働いてもらうには、将来のお金に対する心配をなくすことも大切だ。そこで石坂産業は、資産形成のための知識を社員に学ばせるだけでなく、積み立てのため、社員に保険手当の支給も開始した。

従業員の“生きがい”と“働きがい”を育み持続的に成長する組織へ「健康経営大会議」石坂産業 専務取締役
石坂 知子
1995年の入社後、創業者の石坂好男氏、現代表の石坂典子氏と共に99年の所沢ダイオキシン騒動に始まる苦難を乗り越え、現代表の事業継承のサポートを行った。現在は財務・経理、総務・人事の統括担当。ISO管理責任者としてISO7規格の認証を推進。個性を生かし、社員が自分の子供を入社させたいと思える笑顔と幸せあふれる会社を目指し、日々変革に取り組んでいる。

 一方、労働環境の改善こそが健康経営の第一歩と考えたアシザワ・ファインテックは、現場作業の安全性向上から取り組み始めた。さらに、若者が多く、コンビニ弁当やカップラーメンばかりを食べている社員の体を心配して、管理栄養士が監修する「健康弁当」の提供を始めた。

「会社が半額を補助することで、安くて栄養バランスの取れた弁当を食べられるようにしました。3カ月後に行った健康診断で、血圧、尿酸値、血糖値が減少するなど、明らかな効果が表れました」と芦澤氏は説明した。

従業員の“生きがい”と“働きがい”を育み持続的に成長する組織へ「健康経営大会議」アシザワ・ファインテック 代表取締役会長
芦澤 直太郎
1964年機械メーカーの4代目として誕生、2000年社長に就任するも業績低迷で銀行から廃業勧告。03年創業100周年を機に全従業員を解雇し、世界最高の粉砕機メーカーを目指す新創業を断行。技術開発の基盤となる、多様な人材の採用と誰もが働きやすく才能を発揮できる職場づくりで、業績のV字回復に成功。地域未来牽引企業など認定・表彰は多数。【健康経営優良法人認定ブライト500】を3年連続で取得中。22年習志野商工会議所会頭、23年代表取締役会長に就任。人材育成で地域と産業界の持続的発展を目指す。

 最後にアクサ生命の瀬戸氏は、健康経営を成功させるポイントに「まずは、現状をしっかりと把握することが大切」と指摘。

「アクサ生命では、社員のストレスチェックだけでなく、生活習慣や仕事の満足度、人生観などが分かる『健康習慣アンケート』を提供しているので、ぜひご活用いただきたい」(瀬戸氏)と呼び掛けた。

 健康経営を目指す参加者への示唆に富んだディスカッションが終了し、3時間にわたるイベントは幕を閉じた。

●問い合わせ先
アクサ生命保険株式会社
〒108-8020
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