厳しい環境下でも
“通信を止めない”

「当社の強みは、厳しい環境下でも“通信を止めない”という重要な業務を担ってきたこと。NTTグループの通信は重要な社会インフラであり、当社はその通信施設を正常に、安全に維持管理する責務を負ってきたという自負があります」。そう語るのは臼井賢社長だ。

 2024年1月に発生した能登半島地震や、8月の宮崎県日向灘を震源とする地震では、同社の社員が全国から速やかに現地に入り、被災状況の点検や応急復旧の支援活動を実施した。災害時の通信の確保に関しては、常日頃の訓練を通して万全の体制を整えている。

 同社のもう一つの強みは、全国に数多くのサービス拠点を設置していること。全国津々浦々の通信ビルに対応するため、直営180拠点、協力会社1100以上の拠点を有している。これらの拠点を最大限に活用するため、24時間365日、故障などを受け付ける「MECCS NET24センタ」を設置し、トラブルへの円滑かつ迅速な対応を実現している。

 三つ目の強みは、本社にコンサル部門を設置し、維持管理と工事のワンストップ体制を構築していること。建物の維持管理や点検で得られるデータを基に、劣化度合いを分析して改善提案を行っている。

 臼井社長は今後の注力分野について、「NTTグループの事業は、通信サービスからITソリューションへと変容しつつあります。これに伴って、通信ビルの維持・保全の低廉化や、ITソリューションサービスへの支援、また新規顧客の開拓が必須になっています」と話す。

 具体的には、22年度から「ムーンショットDX」を戦略的施策に掲げ、業務改革に取り組んでいる。到達イメージを、仮想空間でリアル空間を再現する技術「デジタルツイン」を基盤としたスマート維持管理により既存ビルの新たな価値を創出することに定め、BIM(ビム※)の推進からロボット活用まで、省人化・効率化を実現する各種業務プラットフォームのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進している。

 例えば、現場に行くことなくビルの状況を把握するため、BAS(ビル総合管理システム)の画面を遠隔地で見ることができる仕組みを導入したり、BIMの画面にウェブカメラへのリンクを埋め込む検証などを行ったりしている。さらに各種センサー類を導入することで、作業員の五感に委ねていた点検作業の省人化を図っている。「今後もDXによるコスト削減を図り、成長が見込めるデータセンターの構築・保守などに注力しながら、PPP(公共施設の管理業務)事業を含め、新規開拓にもチャレンジしていく予定です」と臼井社長は将来を見据えている。

※BIM=Building Information Modeling。建築物をコンピューター上の3D空間で構築し、企画・設計・施工・維持管理に関する情報を一元化して活用する手法