グループと人材が求める方向性をいかに一致させるか?
鈴木 とはいえ、まだ社員数11名なので、人材採用や教育については、ほとんど僕が直接関与できています。東京通信グループのように社員数が150人前後にもなると、体系化された仕組みが必要になってくるのでしょうね。

1981年生まれ、静岡県出身。2000年に浦和レッズに加入。06年にはJ1優勝。07年にはAFCチャンピオンズリーグ優勝を経験。日本代表では06年にオシムジャパンに選出。唯一全試合先発出場を果たす。15年に現役を引退後は、実業家に転身して、AuB株式会社を設立。「すべての人を、ベストコンディションに」というミッションのもと、現在注目が集まっている”腸活”に関わる研究を8年以上行っている。
赤堀 社員が50人前後だった上場前までは、当社でも鈴木さんと同じように、CEO(最高経営責任者)が採用や教育に直接関与していました。現在は、事業部門ごとの執行役員が、各部門の採用や評価を担当する体制に移行しています。
M&A(企業の合併・買収)をした事業も多いので、採用職種や人事制度・福利厚生の中身は部門によって色合いがあるのですが、グループ全体のベースとなる人事戦略として、東京通信グループのミッションやバリューに共感してもらえる人材を採用し、育成することには取り組んでもらっています。
鈴木 どのようなミッション、バリューを掲げているのですか?
赤堀 「人々の心を豊かにするサービスを創造し続ける」というのが東京通信グループのミッション。「ワクワク」「グリット」「ボールド」「個性」「プロフェッショナル」「称賛」「感謝」「適応」の八つがわれわれのバリューです。
事業や部門が異なっても、これらのミッションとバリューにはグループ全体としてこだわっていきたいと思っています。
鈴木 グループとして目指す方向性と、人材が求める方向性をいかに一致させられるかがポイントですよね。われわれのように少人数の会社であれば、僕自身が社員たちと一緒に食事をしたり、立ち話をしたりすることでベクトル合わせができますが、200人前後社員となると、そうはいきません。
赤堀 おっしゃる通りです。なので、直接の上司が社員一人一人の仕事に対する思いや悩みに耳を傾け、助言や励ましができるような仕組み作りに取り組んでいます。
社員の成長を支援するため、それぞれの社員の適性や能力に合った仕事を振り分け、成功体験を少しずつ積み重ねてもらえるようにもしています。どの社員が、どんな仕事に向いているのかを探り出すためには、一人一人の社員をじっくりと観察することが必要ですが、そのためにも、上司が常に部下に目配りできるようなマネジメント意識の醸成が不可欠だと思っています。
鈴木 僕のプロサッカー選手時代の経験で言うと、上司と部下の関係には「愛」が大切なんじゃないかって思いますね。
サッカー選手として成長できるかどうかは、どんな監督の下でプレーしたのかによっても変わるものですが、試合でのパフォーマンスだけでなく、選手一人一人のささいな表情やコンディションの変化まで敏感に察知して、「どうした?」「大丈夫か?」と気を配ってくれる愛のある監督の方が、選手は育ちやすいようです。
もちろん、監督である以上、厳しいことも言って「試合に勝つ」という組織(チーム)としての結果は出さなければなりません。でも、その一方で、個々の選手のメンタルにもしっかり気を配ることが、「組織」と「人」の両方を成長させることにつながるのではないかと思います。