50代から始める、移住を充実させる「地域おこし協力隊」という選択地域おこし協力隊の任期は1~3年。じっくりと時間をかけて、定住に向けた仕事や住居などの準備ができる(任期後の定住率は約70%)

協力隊のミッションと生活基盤づくりを同時進行

「協力隊のボリュームゾーンは20代・30代ですが、50代以上も約12%を占めています。前職は会社員という方が多く、一定程度社会経験を積まれた方がネクストキャリアとして協力隊に応募し、地域で活躍されています」と話す藤岡課長補佐。

 20代・30代の協力隊員に地域が期待するのは「新しい風を吹き込むこと」だ。一方、50代以上の協力隊員に対しては、自治体が実現したいミッションに合うスキルを求めるケースが多いという。

「そこで、自治体が実現したいミッションの中から、自身の経験や能力を生かせるものを探して移住先を決めるという方法もいいと思います」と藤岡課長補佐。
 
 一方で、移住を検討しているビジネスパーソンの中には、未経験の仕事に就きたいと考えている人もいるはずだ。例えば農業に従事したいという場合。藤岡課長補佐は、未経験者の就農を全面的にバックアップする自治体もあると説明する。

 また、初めて住む地域はどのような所なのかと漠然とした不安を抱く人もいるだろう。「『こんな所とは思わなかった』などというミスマッチをなくすため、『おためし地域おこし協力隊』と『地域おこし協力隊インターン』という制度があります。おためしは、2泊3日程度の期間で、地域の方との交流や協力隊が行う実際の業務を体験できます。インターンは2週間から3カ月程度の期間、協力隊と同じような活動をしてイメージをつかんでいただきます。移住を検討している方が地域のことを知る入り口として利用されていますね」(藤岡課長補佐)。

 地域の気候を事前に体験するためにも制度の利用が目立つ。例えば雪が少ない地域から豪雪地帯に移住すると、冬の生活の厳しさに驚くこともあるからだ。

 最終的には定住定着を図るための取り組みなので、自治体としては、協力隊を卒隊した後も地域で新しい仕事を見つけるなり、起業することを望んでいる。その場合、3年という時間は長いようで短いと、協力隊に参加した多くの人が感じていると藤岡課長補佐は話す。「1年目から、この3年間で何を実現したいかという絵を描き、2年目から起業なり新しい仕事に就くなりの準備を始めて、3年後に独立するという、なりわいづくりと協力隊の活動を並行してやっていく必要があります。この二つのバランスを上手に取ることが大切ですね」と藤岡課長補佐は語る。

50代から始める、移住を充実させる「地域おこし協力隊」という選択地域おこし協力隊の活動を支援する地域自立応援課のメンバー。
右から藤岡茉耶課長補佐、河西建児総務事務官、豊原大貴総務事務官

 50代以上の協力隊員は、人生最後のチャレンジという気持ちが強いため、“本気度”が高く、地域や自治体にとっても頼もしい存在だ。自分が今まで培ってきた経験を生かして地域で活躍したいという思いがあるのなら、地域おこし協力隊を一つの選択肢として考えてみてはどうだろう。