小森 ホーローとは、金属の表面にガラス質の釉薬(ゆうやく)を焼き付けた複合材料で、金属の強さとガラスの美しさ、それぞれの長所を併せ持つ素材です。

 ホーローの始まりは、紀元前1300年に作られた、エジプトのツタンカーメン王の黄金マスク。マスクの青い部分がホーローで、日本へはシルクロードを経て飛鳥時代に伝わったといわれています。

 当社は創業以来、そのホーローにこだわって研さんを続け、他社の追随を許さない高品質なホーローを独自開発しています。ホーロー製品は、手入れが簡単で清潔、湿気や傷、熱などに強い特徴があり、耐久性が高いため、特に水回りには最適な素材です。また近年は、インクジェット印刷によるマット仕上げや、ホーロー3Dインクジェット印刷など、新技術の開発で表現力も多彩になり、デザイン性の高い製品が作れるようになりました。これまでホーローは、複雑なデザインが描けず、人気のマット調の質感が出せないことが弱点でしたが、新技術の創出と進化で、性能とデザインの両立が可能になり、デザイン性にも優れたものとなりました。

――業界の常識を覆す、“値引きをしない定価設定”をしているのも特徴ですね。

小森 商品ブランドの価値を全国で統一するために導入したのが適正価格政策です。当社が設定している希望小売価格(定価)は、商品の価値に見合った適正な価格で、値引き販売を前提としていません。質の高い商品を適正な価格で提供することが私たちの使命だと考えており、ユーザーの信頼を獲得するために実施しています。

 また当社は全国に15の工場を持ち、内製化比率が高いのも特徴です。さらに全国に総面積約7万坪の倉庫を所有しており、安定した商品供給を果たすため、物流機能を社内体制に組み込んだサプライチェーンは、同業他社の中でも大きなアドバンテージになっています。

リフォーム特化型のショールームを展開
売り上げを拡大

高品位ホーローを武器にして、水回りナンバーワン企業を目指す全国約160カ所にあるショールーム。地域密着型で「見て、触れて、納得」してもらう

――全国47都道府県、約160カ所でショールームを運営しています。これは業界最多の数字です。ショールームを重視している理由は?

小森 商品を実際に「見て、触れて、納得」していただきたいからです。特にホーローの質感や品質は、カタログで見ただけでは分かりにくい。耐久消費財を扱うメーカーの責務として、お客さまの近くにショールームを設ける必要があると考えています。

 ショールームには全国に約800人のショールームアドバイザー(社員)を配置しています。派遣社員ではなく社員にこだわるのは、アドバイザーが販売のキーパーソンになるからです。商品への深い理解と知識、そしてホーロー商品への愛情がなければ、お客さまへの適切な提案はできません。

高品位ホーローを武器にして、水回りナンバーワン企業を目指すショールームは社員のアドバイザーが対応し、顧客に寄り添った提案営業を行う

――東京には、マンションリフォームに特化した研修施設もありますね。

小森 リフォーム需要の高まりを見据え、22年にマンションリフォーム研修施設「東京MRe. 墨田テクニカルベース」を整備しました。

 戸建てと比べて、変更が利かない躯体や配管、設備の搬入や工事時間などに、制約が多いのがマンションリフォームの特徴。ショールームではマンションリフォーム特有の納まりをご覧いただけます。

 キッチンや浴室は限られたメーカー規格品の中から選ぶのが一般的ですが、当社のキッチンは1センチメートル刻み、浴室は2.5センチメートル刻みでサイズオーダーできるので、比較的自由な設計が可能になります。研修施設は業者の方々が対象で、リフォーム前の現場調査方法や納まりの知識を習得していただけます。マンションリフォームに特化した拠点の開設は大成功で、4年間で東京のリフォーム売り上げが1.8倍になりました。

 住宅の新築市場は、年3%の減少トレンドですが、リフォーム市場は8兆円規模まで成長するトレンドです。今後はそうした世の中のニーズに合わせて、中高級品シリーズや高機能商品の開発を強化しながら、リフォームに力を入れていく予定です。また、海外(インバウンド)のお客さま向けや、高級シリーズに特化したショールームなども考えています。