サプライチェーンの抜本的な見直し
「変革への再挑戦」
――「中期経営計画2026」のテーマは「変革への再挑戦」。これに込められた思いは?
小森 前中期経営計画では、売上高は目標を大きく上回りましたが、営業利益率に関しては、資材やエネルギー価格が高騰する中、生産の合理化やデジタル活用などによる効果創出が遅れ、目標には未達でした。それを踏まえて、スピード感を持って変革へ“再”挑戦しようと考えました。具体的には、「収益力強化」と「持続的成長を実現する基盤構築」に取り組みます。前者は抜本的な構造改革とマネジメントの強化、後者は将来を見据えた積極的な投資と社会課題への対応(経営基盤のさらなる強化)です。
既存事業の持続的成長に関しては、今、TDX「Takara standard Digital Transformation」に取り組んでいます。これは、DXによってサプライチェーン全体の業務を抜本的に見直し、「戦力の最大有効活用」を図ることで、人的生産性向上や在庫・物流費の削減を実現するプロジェクト。顧客接点情報の一元的活用によって業務を効率化させたり、施工起点のSCM体制の構築によって製品在庫を30%削減したりすることを目指しています。社内的な大改革となるため、社長直轄の「構造改革推進室」を立ち上げ、ハレーションを起こさないようにじっくりと取り組んでいます。TDXの進展は、収益力の強化に確実につながります。
投資に関しては、現在、400億円規模で、福岡工場でホーロー浴室パネル生産の専用棟を建設しています。この投資には、当社のシステムバス製品の存在感を高めていく狙いがあります。浴室の業界シェアは、23年度で約14%の3位(当社調べ)ですが、キッチン同様、業界トップシェアに引き上げたいと思っています。
専用棟では、製造工程でオートメーション化を推進、生産リードタイムを短縮し、生産能力を現在の1.5倍に高める計画です。
海外事業で
売上高100億円を目指す
――「Takara Global Vision 2030」では海外事業の加速を掲げていますね。
小森 ホーロー素材を生かした唯一無二のキッチンメーカーとして、海外市場におけるプレゼンスを高め、日系キッチンブランドのグローバルトップリーダーを目指しています。現在の海外売上高は約10億円で、台湾、中国、ベトナムが中心ですが、今後はインドとインドネシアを加えた5エリアで、販売の基盤をしっかりつくっていく予定です。
もともとホーローのキッチンは湿気に強く、油料理の多い高温多湿なアジアのキッチンで優位性を発揮します。
海外での認知度を高めるために、現地の展示会にも積極的に出展しており、インドネシア最大の建材系展示会「Indo Build Tech Expo」に出展しました。現地で好感触を得られたため、進出に向けたパートナー探しを進めています。
24年4月にはグローバル事業本部を新設。販売拠点の展開とサプライチェーンの構築などを強化しながら、海外売上高100億円を目指します。将来は、耐候性に優れたホーローの壁装材(パネル)の認知度も高め、全世界で海外事業を加速させたい。社内では「全世界ホーロー化計画」と呼んでいます。