白石 やはり、これからの時代は、人口減少という大きな時代の流れを見ても、中小企業といえども、DXは不可欠といえますね。例えば、デジタルネイティブのZ世代は、いわゆる「タイパ」をすごく意識しています。
加えて、転職が当たり前の時代になってくると「あうんの呼吸」で行う業務は成り立ちません。人が変わっても同じように業務を遂行できる環境にしておかなければならない。とにかく歯を食いしばってDXを推進し、「これからの時代」にマッチした変革を行うことが求められています。
白石直樹
デジタルソリューション本部執行役員デジタルソリューション本部長
諏訪 「ミクロな経営環境」からも同じことがいえます。当社の主要取引先は自動車メーカーですが、大きな変革期にあります。将来的にEV(電気自動車)が主流になれば、部品点数が大幅に減る一方、生産拠点の海外シフトも進むため、国内の仕事量は減ってくるでしょう。これまでのような「待ち」の姿勢では仕事はなくなってしまうと思います。
デジタルの力を積極的に利用し、製品やサービスの付加価値を高めるなど、自社の優れた点をより強化していかなければなりません。
メガバンクのような大手金融機関もデジタル化をどんどん進めていますね。SMBCグループでは、自社のデジタル化にとどまらず、新規事業として、中小企業のDX支援にも力を入れており、すでに10社以上の子会社がデジタルサービスを提供していると知り、驚きました。やはり、時代や経営環境の「大きな変化」が影響しているのでしょうか。
銀行も「デジタル化」や新規事業が求められる時代
白石 コロナ禍以降、社会全体でデジタル化が加速しています。これに伴い、非金融事業者の新規参入、いわゆる「プラットフォーマー」と呼ばれるIT関連事業者の金融領域への参入が相次いでいます。
かつてマイクロソフト社の創業者、ビル・ゲイツ氏は「銀行の機能は必要だが、銀行は必要なのか(Banking is necessary, banks are not)」と発言しました。これは「銀行は変わっていかなければ生き残れない」ことを示唆しています。
そこで、SMBCグループでは、13年ごろから金融業界の中でも率先してDXに取り組んできました。
デジタル系事業としては中堅・中小企業のデジタル化を支援する「プラリタウン」や電子契約の普及に大きく寄与してきた「SMBCクラウドサイン」など、金融と非金融の両輪で、中小企業や社会の課題解決を目指す事業・サービスを展開しています。
◎SMBCグループの多彩なデジタルサービス
実際に、こうした事業を見てきて、中小企業のDXに難しさも感じています。アナログからデジタルに切り替えるには、最初に現状のアナログのプロセスを見える化してデジタルに置き換える作業が必要ですが、それをできる人的な余裕がない、そうするとせっかく導入したデジタルツールを使いこなせない、あるいは現場がデジタルツールを使ってくれない、また、できるところだけ部分的にデジタル化していくとプロセス全体のシステムが連携できないので効率化につながらない、アナログの仕事のやり方にシステムを合わせていくとツールのアップデートに対応できない……といったことが挙げられます。
諏訪さんが考える、中小企業がデジタル化やDXを進めるときのポイントは何でしょうか。