リアル店舗の強みを活かして
サーキュラーのハブ機能を備える

鈴木:これまでを振り返ってみると、草の根的な活動を継続して進めていることに尽きると思います。お客様のご協力を得て、ペットボトルの回収量は、直近では約1万5000トンで、この10年間で約2倍以上に増加しています。取り組みにご協力いただくお客様が増えている証でもあります。同時に、私たちは、回収したペットボトルの用途にもこだわり、現在は、イオンのプライベートブランド「トップバリュ」ペットボトルに再生素材を使用し、それをお客様にご提供しています。

猪股:鈴木さんが2021年に立ち上げた「ボトルTOボトル」の取り組みですね。

鈴木:取り組みを開始するに当たっては、お客様から集めたペットボトルをいかに効率的に運搬するかが課題の一つでした。納品便が戻る際に回収したペットボトルを一つの拠点に集約し、1次加工をしてから再資源化・商品化のプロセスに回していく流れを基本としていますが、当時は、イオングループには首都圏では小規模な店舗も含めて密度高く存在するので、複数の納品便がそれぞれの店舗に行って戻ってくるよりも、一つの便でいろいろな業態の店舗を横断的に回ったほうが効率化できる可能性があると見て、試行錯誤を繰り返してきました。

 ペットボトルの資源循環においては、資源価格や物流コストなど変動要素が大きく、短期でバランスを取る難易度が高い資源だと感じています。さらに、そのサプライチェーンは長大なので、どこかの企業が負担を強いられてしまう可能性も高いです。私たちが回収から再商品化まで一気通貫で管理することによって、再生原料の安定的な量と質、適正な価格での調達が可能になります。自社単独の取り組みでは全体的な社会コストは下がらないので、不足する機能を補完すべく、各社との共創・クリエーションによって進める、それが私たちの目指す全体最適です。

猪股:一部の店舗では、使用済み食用油の回収も始めたそうですね。

鈴木:店頭でペットボトルの回収を始めた背景には、その地域の資源回収の頻度や回収拠点が少ないなど、地域の課題解決のためでもありました。これが当たり前のようにお客様がイオンにペットボトルを持ってくる行動に変わってきました。いまではペットボトルを含む容器包装だけでなく、多様なメーカーとも連携しながら廃食油、電池、衣料、雑貨品など回収品目を広げています。リアル店舗の強みを活かし、販売と回収一体型のサーキュラーハブ機能を備えることに努めています。

猪股:化石燃料の使用を減らすことは大きな課題ですが、航空機のジェット燃料も、2030年までに5%相当量を持続可能な航空燃料(SAF)に置き換えることが義務化される見込みです。そのバイオ燃料は、微細藻類や廃食油などからつくられる。イオングループは、そういった自社の製品以外の分野にも関心があり、日本の資源循環や地政学上での安定調達についてもいろいろと考えているのではないでしょうか。

鈴木:CEというと静脈産業(使用済み製品・廃棄物を回収し、再使用・再生利用・処分をする産業)との連携に限定されるように聞こえますが、これはCEの基盤事業そのものといえるでしょう。つまり、環境負荷の削減と経済成長を両立していくための基盤であり、自社のオペレーションを改善しながら、サプライチェーンを社会や地域と連携することで、イオンがインフラの機能を担っていく。その一つとして、家庭から回収した廃食油からSAFやBDF(バイオディーゼル燃料)が生成され、それが地域交通の中で利用されるといった地域全体の脱炭素に貢献する好循環を生み出せればいいと考えています。

 また、この基盤を活用した新たな価値を持つ商品やサービスを提供することで、お客様から共感・支持が得られ、事業成長へとつながっていく。お客様が求めるものに行き着くことが私の最大ミッションだと思っています。そのためには、イオングループのビジネスモデルを循環型に転換させることが重要です。