変革によるトレードオフを
恐れてはいけない

 テクノロジーをてこに発想の転換をし、バリューチェーン変革までを先導するのは容易ではありません。

西田:変革を先導するには、社員が持つスキルにも変革が必要だと思います。従来は、現場の業務に精通していることが求められていました。ですが今後は、現場の知識に加えて「仕組みを設計できるスキル」を持った人材が必要となります。

 営業部門で言えば、トップセールスマンではなく、優秀なセールスマンの行動特性やパターンを仕組みへと落とし込み、組織のナレッジやケイパビリティへと昇華させることができる人を指します。こうした人材こそが、人手不足という難問を抱える現場に不可欠です。既存事業の存続だけでなく未来の商品や事業を生み出すためにも、「仕組み化人材」の育成が急がれます。

野村:仕組み化を推進するには、人材育成だけでなく、データに基づく科学的なアプローチも大切です。AIでの予測や最適化によって、在庫の最適アロケーションや作業手順の決定、作業人数の割り付けなどが迅速にできるようになります。業務量に合わせて人員を最適化することで業務のムリ・ムダ・ムラを省けますし、予測による先読みによって緊急出荷等の急激な業務負荷上昇を抑えることもできます。

西田:とかく現場には、さまざまな状況変化に対応するために必要以上のリソースを抱えておきたいという欲求が常にあります。それが生産性低下と人手不足を招いているという側面もあるのです。

野村:ダイナミックな変革には、何かを捨てたり諦めたりしなければならないトレードオフが付きまといます。それを恐れていては、本気のモードチェンジは実現しません。

 とはいえ、顧客満足度の低下など変革の副作用に対する不安もあるでしょう。ゆえに大切なのは、「変革の前後を予測する」ことです。バリューチェーン変革に向けて、シミュレーションを駆使して期待効果の算出を行い、変革によるトレードオフをデータで事前に把握し、必要な対策を講じることで、不安を解消していく。こうしたデータによるアプローチが欠かせません。

西田:また、我々コンサルタントが、外部の目線で変革の伴走をすることも重要になるでしょう。私たちはさまざまな企業の支援を通じて、変革の途上で発生する課題の解決方法を熟知しています。現場目線に立って変革を描き、現場と一体となって課題や不具合を一つひとつ潰していくことを大切にしています。

 ただし、だらだらと時間をかけて伴走し続けることは考え物です。改革が長期にわたると、クライアントが負担するコストも膨らむからです。その意味で「スピード」も改革には極めて大事な要素となります。ゆえに私たちは、70点のクオリティでも100点のスピードで仕組みを提供するという価値貢献「クイック・アンド・ダーティ」を目指しています。

野村:人口減少社会という我々がまだ見ぬ未来に向けて、どのように新たな価値をともに創出できるか。リッジラインズは、変革を加速させるパートナーでありたいのです。

 

◉企画・制作|ダイヤモンドクォータリー編集部
◉構成・まとめ|江口陽子  ◉撮影|佐藤元一