とはいえ、AlgaleXは、うま味調味料事業を志して立ち上げられた企業ではない。高田社長が語る。
「前職の商社時代、国内の水産養殖で用いられる魚粉を輸入するチームの新規事業を担当していて問題意識を持ちました。天然の漁業資源が激減する中、世界中で養殖魚(ハマチやタイなど)を育てるのにペルーなどから天然の魚(イワシ)を買ってきて食べさせている。これでは、水産資源の確保のためのソリューションとしては本末転倒です。そこで、飼料として魚ではなく藻を使えないかと考え、藻類に着目しました」
鍵となったのは
「オーランチオキトリウム」という名の藻
飼料の肝は、魚類が体内で合成できない各種アミノ酸とDHA。魚粉の原料であるイワシ自身も、餌である藻類などのプランクトンから摂取している以上、藻を直接、飼料にすればよい――。
鍵となったのは、オーランチオキトリウムという藻だ。“石油を生み出す藻”として、10年代、注目を集めた。筑波大学などで大量培養の技術開発が進められたが、この研究こそが、AlgaleXの基盤となっている。
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オーランチオキトリウムの入ったフラスコと、培地の泡盛かす(液状)の入ったフラスコを手に
高田社長は、インドネシアでパーム油の廃油を“餌”として藻を培養する企業にCFO(最高財務責任者)として転職したのだが、そこには筑波大での研究で実務面のトップだった多田清志氏がいた。ビジネスマンである高田氏と研究者である多田氏が手を組んだことで、AlgaleXの今がある。多田氏は現在、同社でもCTO(最高技術責任者)として技術開発をリードしている。
起業の際にうるま市を選んだのは、沖縄県が設けた「沖縄健康バイオテクノロジー研究開発センター」(以下、センターと記す)があったからだ。そこは日本で唯一、大容量の培養機器を貸し出している施設だった。
この時点でも、AlgaleXの最終目標は魚粉に代わる植物性飼料の開発と事業化だったが、そこに向けての研究の中で「大転換」(高田社長)が起きる。
サステナブルな飼料生産を狙う同社は、オーランチオキトリウムの培養で廃物の活用を企図している。最適な“餌”を求めてさまざまな試料で実験を繰り返していたところ、グルタミン酸やコハク酸といったうま味成分が高くなる方法を発見した。
「実際に粉末にして口にしてみたら、ものすごくうまい!それが現在の主力である『うま藻』事業の始まりでした」(高田社長)