――物流の危機が懸念された「2024年問題」ですが、その期限である24年4月に突入し、約1年が経過しました。

物流の「2024年問題」とは、働き方改革の一環として、トラックドライバーの残業時間の上限を規制することで、モノが運べない物流危機が発生するというものです。ただでさえ、ドライバーが不足している中で、1人当たりの稼働時間が減ってしまうことにより、当初は大きな混乱が起きるとの懸念が高まりました。しかし、これまでのところ、大きなパニックは起きていません。

しかし、改めて強調しておきたいのは、「2024年問題」はこの1年で終わるものではなく、“24年から始まる問題”だということです。

人口減少が進む中で、ドライバー不足はこれからも年を追うごとに悪化します。特に長距離ドライバーの高齢化は深刻です。ドライバーの賃金水準を少なくとも他産業並みに引き上げない限り、若年層がドライバー職を選択することはあり得ません。そのためには、運賃水準のアップに加えて、物流関係者が全員で効率化に取り組むことが不可欠です。

「物流改正法」の施行、荷主側にも規制措置

――社会インフラである物流を維持していくために、どのような取り組みが必要でしょうか。

事態を重く見た政府は、物流関係閣僚会議を開くなど、ここ数年、物流危機を乗り越えるための施策を矢継ぎ早に打ち出してきました。

その集大成ともいえるのが、25年4月と26年4月に段階的に施行される「物流改正法」です。この法律の内容は多岐にわたっていますが、大きくは物流事業者への規制と荷主に対する規制に分けられます。

物流事業者への規制では、運送取引の適正化・健全化を目的として、元請けとなるトラック事業者に「実運送体制管理簿」の作成を義務付けるほか、運送を委託する下請けを2次までにとどめる努力義務を課します。

トラック運送の課題の一つが多重下請け構造であり、これによって末端の実運送事業者が低運賃での運行を余儀なくされる状況が続いてきました。こうした取引構造を変えていくために、物流業界内での自助努力を促していくことが法律の趣旨となっています。

もう一つの柱となるのが、荷主への規制的措置です。これまでの物流に関する規制対象は物流事業者にとどまっていました。しかし、物流を将来にわたって持続可能なものにしていくためには、需要側、つまり運送業務を委託する側にもマインドチェンジや行動変容が必要です。その意味において、今回の物流改正法は非常に画期的だと評価できます。