――荷主への規制はどのようなものになるのでしょうか。
26年4月から、全ての荷主に対して、物流効率化に取り組む努力義務を課すとともに、一定規模以上の荷主を「特定荷主」に認定し、物流効率化に向けた中長期計画の策定と定期報告を義務付けます。計画に基づく取り組みが不十分だとされれば、勧告や命令によって社名を公表される可能性もあります。
また、約3000社といわれる特定荷主に対し、「CLO(物流統括管理者)」の選任を義務付けます。CLO(Chief Logistics Officer)とは、まさに企業における物流の最高責任者であり、法律では役員クラスから選任すべきとしています。
CLOという新たなポジションが生まれることによって、大きな変化が期待できます。荷主企業内では生産部門や営業部門の発言権がどうしても強く、物流部門にしわ寄せがいってしまうことも少なくありませんでした。しかし、CLOが各部門との全体調整を主導することで、物流への負担が大きい商習慣の見直しなどに取り組むことができます。
荷主という立場から、利用する物流事業者の健全な事業運営をサポートしていく必要がありますし、CO2排出量の削減などにも配慮しなければなりません。
「持続可能な物流」に求められる取り組み
――国が持続可能な物流に向けた包括的な取り組みを進めていくことは分かりました。とはいえ、実行主体は物流事業者であり荷主です。具体的にどのような取り組みが必要になるでしょうか。
ご指摘の通り、国ができることはあくまで枠組みや土台づくりであり、主体的に取り組むのは物流事業者であり荷主です。それを実行するためのキーワードは「大量化」「デジタル化」「共同化」「標準化」ではないでしょうか。
まず、大量化では、国内物流の背骨となる長距離幹線輸送をトラックから鉄道や海運といった大量輸送機関に転換(モーダルシフト)していく必要があります。トラック輸送でも1回に大型トラック2台分の荷物を運べるダブル連結トラックの活用を増やしていかなければなりません。
デジタル化は言うまでもないことですが、より少ない人員で物流業務を運営していくために不可欠な要素です。ロボティクスの活用による倉庫作業の自動化・省力化をはじめ、非効率となっているさまざまな業務をDX(デジタルトランスフォーメーション)によって効率化しなければなりません。例えば、無人トラックの運行実現にも期待が高まっています。
加えて、限られたリソースを有効活用するためには共同化が必要です。物流事業者、荷主とも、個社単位での効率化にはおのずと限界があります。共同配送や運行共同化によって積載率を改善しなければなりません。当然、その実現にはデジタル技術の力も借りなければなりません。
そして、そうした効率化を実現していくためにも、ハード・ソフト両面にわたる標準化が求められます。ハード面ではパレットのサイズ統一、ソフト面ではデータ標準化によって企業を超えた連携を容易にしていくことが重要です。
こうした取り組みが実を結んでいくためには、一定の時間がかかりますが、待ったなしで進めていかなければなりません。まさに、一致団結した物流のステークホルダーによる“総力戦”が問われています。
1969年10月の創刊から50年超にわたり「経済の中の物流」という視点から一貫した報道を行っている物流業界専門紙。物流報道の中に“荷主”という切り口を持った媒体として評価されている。主な内容は荷主企業の物流動向、行政の物流関連動向、トラック、倉庫、鉄道、海運、航空など物流企業の最新動向、物流機器、WMS(倉庫管理システム)ソフトなどの関連ニュースなど。週2回発行。