――スポーツセグメントでは、グループ会社であるプロ・バスケットボールチームの「千葉ジェッツ」、Jリーグに所属する「FC東京」の観戦事業と、公営競技のインターネット投票サービスを中心とするベッティング事業の二つを展開しています。これまでSNSやゲームで成長してきたMIXIがこれらの事業に取り組む理由は何ですか。

木村 当社がこだわる「コミュニケーション」の観点で、スポーツ事業は重要です。

 まず観戦事業ですが、家族や友人と一緒にスポーツ観戦を楽しむことは、最高のコミュニケーション機会の一つであると当社は考えています。かつては、お茶の間のテレビで野球観戦をするのが、親子や友人とのコミュニケーションの定番でしたが、今は地上波で放映されるスポーツ番組が年々減っています。

SNSの先駆者「モンスト」で急成長。MIXIが今こそスポーツと海外を強化する理由強豪クラブとして成長し続けるプロ・バスケットボールチーム「千葉ジェッツ」の運営も行う

 そこで、プロスポーツチームの経営とともに、仲間と一緒にスポーツを楽しめる場の創出も行っています。21年に業務提携した英国風PUB「HUB」でのライブビューイングイベントの開催や、スポーツ観戦に特化した店舗の検索・予約サービス「Fansta」の運営などを行い、コミュニケーションの機会を提供しています。

オーストラリアでもベッティング事業を開始

――ベッティング事業では、どのような展開をしていますか。

木村 当社のインターネット投票サービスの一つである「TIPSTAR」は、競輪やオートレースのレース映像を家族や友人と見ながらネット投票ができる、共遊型のスポーツベッティングサービスです。

 投票は1人でやるのも楽しいですが、仲間と一緒にやると、いろんな見方や予想が出て盛り上がるもの。友人の予想に乗っかって投票するなど、ベッティングを通じてコミュニケーションが交わされ、互いの関係性を深められるわけです。

 当社の狙いは、仲間と⼀緒に楽しめるベッティングサービスを「ソーシャルベッティング」という独自のポジショニングで確立させ、市場に変⾰を起こすことです。

――グローバル戦略の重点プロジェクトとして、オーストラリアでもベッティング事業を始めました。勝算はありますか。

木村 当社の連結子会社であるオーストラリア現地法人が、現地のレース(競馬、ドッグレースなど)とスポーツを対象としたベッティングサービス「betM(ベットエム)」を提供しています。

 そして今年2月には、オーストラリア証券取引所に上場するベッティング企業であるPointsBet(ポインツベット)の株式を100%取得することを発表しました。

SNSの先駆者「モンスト」で急成長。MIXIが今こそスポーツと海外を強化する理由スポーツのグローバル展開として、オーストラリアを重点拠点と位置付ける

 オーストラリアにはスポーツや競馬などのベッティングが好きな人が多く、例えば「メルボルンカップ」のような特別な競馬レースのある日は、祝日となり、男女共にドレスアップして盛り上がる光景が見られます。このように、家族や仲間と一緒に楽しむ文化が根付いているので、受け入れられやすいのではないかと判断しました。

 しかも、オーストラリアは、人口がわずか2600万人にもかかわらず、ベッティングの市場規模は24年度で約6.6兆円と、日本の公営競技の市場規模にほぼ匹敵しています。人口比で考えると日本の4倍以上の市場規模に当たり、今後も年5%ずつの成長が見込まれているので、大いに期待しています。