日銀総裁の人選が象徴的だった。財務省は武藤敏郎元財務次官を送り込もうとしたがリフレ派に拒否された。逆に財務省は側近の政策介入に神経を尖らす。首相が竹中氏を経済財政諮問会議のメンバーにしようとした時は、麻生財務相が阻止した。竹中氏は産業競争力会議のメンバーになり、成長戦略に関与する。浜田、本田両氏は内閣官房参与として首相官邸に席を持つ。

 もう一つの勢力がある。藤井聡京大教授を中心とした国土強靭化を主張するグループ。公共投資に重点をおく新ケインズ主義で、自民党に根を張っている。

 安倍政権は①財務省、②新自由主義、③新ケインズ主義の三本足の上に成り立っている。①は財政健全化、②は消費増税先送り、③は財政膨張。水と油の寄り合い所帯だ。

 金融緩和でいち早くデフレから抜け出せれば、政権内部の争いもなくことを進めたかもしれない。アベノミクスは滑り出し上々だったが、株価の下落、長期金利の上昇という波乱に見舞われている。

 リフレ派は緩和をさらに強め長期金利をねじ伏せ、消費増税を先送りしてでも経済を安定成長軌道に乗せようとしている。国土強靭化を主張するグループは、参議院選挙を前に公共事業の積み増しに熱心だ。

容易ではない増税の決断

 財政の問題を脇に置いた日銀マネーの大量投入は何を招くか。インフレを期待して株価上がれば長期金利が跳ねる。株が急落すれば景気への期待感は萎(しぼ)む。

 消費増税の先送りは政権にとってリスクが大きい。日本の国債大量発行は、潤沢な国内貯蓄があることを前提に国際市場で許容されてきた。いわば増税の代わりに貯蓄を国債購入に回すことで持続可能とされてきたのである。それが、機動的な財政出動という名のもとに貯蓄に手をかけた途端に増税先送りとなったら、外資の格付け機関はこぞって日本国債の格下げを行うだろう。国債の信用が損なわれる。

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動く機会をうかがう麻生財務大臣

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