財政運営の持続可能性について、いったん、市場の信認を失った国が、どれほど苦しい財政運営を迫られることになるのか、市場金利上昇に歯止めをかけるには、短期間でいかなる財政運営をしてみせることを迫られるのかは、連載第4回「日本の財政は持続可能か 3%成長でも20年度で財政赤字は50兆円」、および連載第6回「市場金利が上昇したら何が起こる?欧州危機の経験が語るもの」で詳しくみた。筆者担当の最終回となる今回は、わが国に求められる金融・財政政策運営はどのようなものかを考えたい。
「異次元緩和」導入2ヵ月の状況
黒田日銀がいわゆる「異次元緩和」をスタートさせてから2ヵ月が経過した。株式市場は活況に沸き、安倍首相のリーダーシップもあって、国全体として、経済の先行きに関する期待が好転する兆しがみられる。「デフレ均衡」は破られつつあるといってよいだろう。そうしたなか、資産価格の上昇傾向が目立つ。
他方、物価動向に目を転じれば、円安が輸入物価を押し上げる影響が出始めているものの、一般物価全体として、明確な上昇基調が強まるのか、それが、実体経済に好影響を及ぼすのかどうか、判断はまだ難しい状況にある。株式市況は5月下旬以降、いったん、調整局面に入ったようにも見受けられる。
気になるのは国債市場の動向だ。4月に導入された「量的・質的金融緩和」は、少なくとも当初は「イールドカーブ全体の金利低下を促す」(日本銀行『「量的・質的金融緩和」の導入について』2013年4月4日)ことを企図していたはずであるが、国債市場で形成される長期金利(国債の価格と裏腹の関係)はその導入以降、国債の値動きが荒くなるなかで、徐々にその水準を切り上げつつある(国債の価格は切り下がりつつある)のが実態だ。これには、①インフレ期待が徐々に高まりつつあることが、金利形成に織り込まれつつあるという側面と、②「異次元緩和」によるオペの規模が大き過ぎ、市場流動性が乏しくなっており、値が飛びやすいという側面の2つがあるように見受けられる。