欧州市場に本格参入
日本の防災技術を世界へ
16年に高所作業車で世界的なブランド力を持つフィンランドのブロント スカイリフト社を買収したことを皮切りに、グローバル展開も加速中だ。以降、同社の知見を取り入れて国際的な競争力を持つ消防車の開発を進め、23年に発表した新型はしご車ではEN規格(EU〈欧州連合〉域内における統一規格)を取得。競合企業がひしめく欧州への本格参入を果たした。これまでアジア中心だった視野を全世界に広げた形だ。
未来の課題解決を見据え、研究開発にも積極的に投資する。23年、火災環境を再現できる総合実験場や防災訓練棟など、充実した設備を有する研究拠点「モリタATIセンター」を大阪府八尾市に開設。大学や研究機関、異業種の企業と連携した共同研究が活気づいている。例えば、「現在進行形の重要な研究テーマが、EV(電気自動車)関連火災への対応です。リチウムイオンバッテリーは一度火が付くと鎮火が難しく、まだ消火方法が確立されていません。訓練と検証を重ねながら最適解を模索しています」と加藤社長。

25年10月に閉幕した大阪・関西万博では、自社で開発中の「AIを活用した現場指揮支援システム」を会場に投入。大阪市消防局と共に実証実験に取り組んだ。消防隊員が装着したウェアラブル装置や消防車のセンサーを通じて、生体情報や環境情報をリアルタイムに収集・可視化し、安全な消火活動をサポートするものだ。「一日も早く商品化してほしい」という現場の切実な声が、すでに多く寄せられているという。