電力消費を抑える「省エネ」から、電気を創る「創エネ」、あるいは貯める「蓄エネ」へ。今、企業や家庭でのエネルギー対策は大きな転換点を迎えている。再生可能エネルギーの代表格、太陽光発電では普及の拡大と共に技術者の育成が、また蓄電池の分野では安全性確保に向けた技術的課題が大きなテーマとなっている。電力を賢く使う「スマート化時代」の課題と今後の方向性をレポートする。
PART 1 エネルギーを創る
住宅や産業用の太陽光発電は、国の買取制度や税制優遇を追い風に、設置量を順調に伸ばしている。一方、普及に伴って、主に工事や設置後の発電効率に問題も出てきているが、その現状を追った。
太陽光発電協会(JPEA)発表の統計データ(グラフ参照)によれば、2011年度に268万キロワットだった国内での太陽電池総出荷量は、12年度には437万キロワットと、60%を超える大幅な増加となった。02年度には27万キロワットだった総出荷量は、この10年で16倍近くに伸びた計算だ。
創エネの意識と実績を
後押しする太陽光発電
冒頭の12年度の数値のうち、輸出に回ったのは56万キロワット強と全体の13%弱で、大半が国内での発電に使われている。このように太陽光発電が急拡大している最大の理由として、電力の買取制度が挙げられよう。
09年に家庭向けで始まった買取制度(出力10キロワット未満で、家庭で使い切れなかった余剰分の電力のみ買取)は拡大され、12年7月からは、産業用(10キロワット以上)の太陽光発電で、発電量の全量を電力会社に買い取ってもらえるようになった。20年間固定で1キロワット時当たり42円(税込み)という価格にもインパクトがあり、普及の大きな後押しとなった。
13年度の買取価格は37.8円(同)と単価は下がったものの、20年間固定買取は継続されており、メガソーラーや自社の社屋や工場等に太陽光発電の設置を検討する企業も多い。
グリーン投資減税など
税制も導入を促進
買取制度に加えて、税制面での優遇も、企業の太陽光発電導入のきっかけとなっている。
例えば、本来なら13年の3月で終了するはずだった「グリーン投資減税」が16年まで延長されることが決定。即時償却(初年度の100%一括償却)も15年3月末までの延長が決まったほか、コージェネ(熱電併給システム)設備が新たに即時償却の対象になるなど、減税となる設備の裾野も広がっている。
従来、太陽光発電システムの法定耐用年数は、原則17年。つまり、長い年月をかけて少しずつ経費として減価償却するしかなかった。それがグリーン投資減税を用いることで、初年度の一括償却や30%特別償却ができるわけだ。
導入企業としては、必要経費を増やして本業の利益を減らし、結果として法人税減税の効果が得られる。つまり、太陽光発電システムの導入が、企業の副業(売電収入)や社会貢献という枠を超えて、節税装置としても利用できるということだ。