M&A成功の解は
「二者択一」にはない

  基調講演後には、樋口氏と樋爪氏が再登壇し、全体ディスカッションの時間が設けられた。議論に先立ち、モデレーターを務めたPwCアドバイザリー パートナーの及川智郎氏が先の両氏に対して、事業領域を拡大してきた中で見えてきた「成果と課題」について問いかけた。

未来のコア事業をどう見つけるかM&Aによる事業基盤強化の要諦PwCアドバイザリー パートナー 及川智郎氏

  樋口氏は「基盤事業や成長事業など、性格の異なる事業を数多く擁しているほうが経営の自由度は増します」と多角化のメリットを指摘。教訓として「技術ドリブンで事業拡大を進めてきたが、その強みを最大限に活かすためにも、市場に対する理解は不可欠だと感じています。現在は事業部主導でM&Aを行っています」と述べた。一方の樋爪氏は「多角化によって景気変動に強い事業構造を構築できました」と成果を語るとともに、「企業文化の違いによるPMI(合併・買収後統合)の難しさ」を課題として挙げた。

  両氏への問いかけを導入として、35分間の全員参加ディスカッションが行われた。テーマは「戦略的事業買収で獲得できたもの、足りないものは何か」。この「問い」を切り口に、各テーブルではPwCスタッフのモデレートの下、各社の現状に即した深い対話が展開されていく。

  討議後の全体発表では、さまざまな論点が明らかになった。M&Aにおけるコーポレート部門と事業部門の役割分担、また「コアとノンコア」をめぐる議論などが活発に交わされた。

  ディスカッションに参加した樋爪氏はあらためて「理路整然とした経営をしてきたわけではなく、各事業部が愚直にビジネスに向き合ってきた結果が当社の現在の姿」と自社の取り組みを振り返った。これに同意して樋口氏も「戦略的に事業ポートフォリオを構築してきたというよりも、一つひとつのディールの積み重ねが現在のポートフォリオを形成した」と語った。

  次代のコア事業を見出すことは容易ではない。討議で得られた数々の視点は、多くの日本企業にとって不透明な未来を切り拓くための確かな足がかりとなるはずだ。

未来のコア事業をどう見つけるかM&Aによる事業基盤強化の要諦

 

 

◉構成・まとめ|金田修宏 ◉撮影|佐藤元一