折しも不動産市況が堅調で、マンションは想定より良い条件で売却できました。結果として、住宅ローン負担の軽減にもつながりました。
「父を支えるための同居であり、急な環境の変化は妻や子どもにも少なからず負担を強いてしまいました。しかし、結果として住宅ローンが消え、子どもの学費に充てる十分な資金まで確保できたことで、家計のピンチは救われました。生活の拠点を完全に実家へ移すためにマンションを処分したことが、思わぬ形で家族の未来を明るくしてくれたんです」
一郎さんの死去後
円満な相続手続きへ
同居を始めてから約2年後、一郎さんは自宅で静かに息を引き取りました。健一さんご家族にみとられながら、穏やかな最期でした。
相続発生後、税理士は速やかに手続きを開始。健一さんが一郎さんと同居していた事実は、住民票・光熱費の実績などからも明確に確認でき、小規模宅地等の特例を問題なく適用し、相続税の申告書を提出しました。
また、生前に税理士の勧めで、次男・勇也さんへの配慮(現預金を優先的に相続させる旨)を含めた「公正証書遺言」を作成していたため、兄弟間のトラブルもありませんでした。
申告・納税の手続きは試算通りに完了し、金銭的な負担なく相続を終えることができました。
「泣き言を言ってしまったが生前にちゃんと動いてよかった。あの相談がなければ、こんなにスムーズにはいかなかったと思います」と健一さん。
勇也さんも「兄が父のそばにいてくれたおかげで、父も安心して最期を迎えられたんだと思う」と話してくれました。
相続税を大幅に減らせる
「小規模宅地の特例」の注意点
今回の田中家のケースは、「特例の存在を知った」だけでなく、「生前に同居という行動を起こした」ことが成功の鍵でした。相続が発生してからでは、同居という事実は作れません。
そこで、小規模宅地の特例について、要件や注意点を「いちよう相続・税務サポート」の田澤広貴税理士に聞きました。
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田澤税理士:小規模宅地等の特例を使う上で、誤解されやすいのが「同居」の定義です。単に住民票を移すだけでは不十分で、税務署は生活の実態を確認します。



