◇実例――ある職場の光景――何も決めない副部長S氏

 最近、筆者がある大手電機部品メーカーの役員の方から伺った話。会社は古く組織も昔のピラミッド型だがアジア向け製品が好調。問題の副部長S氏は55歳、設計管理を担当し、30人近い設計技術者を統括する立場だ。副部長になって最初2年ほどは技術のエキスパートとして生き生きと仕事に取り組んでいたが、最近は大型プロジェクトや新しい案件になると、自分で仕切ることがなく、人任せになったという。

 設計の現場は、顧客からの仕様変更要請など新しい課題が次々起きる。この手の対応は長年の経験で仕事と組織・メンバーを熟知しているS氏は得意な領域であったが、最近は、骨の折れる問題は「何事も経験が大事だ。皆と相談してやってくれ」といって、すべて課長・係長に投げてしまう。何事も自分で決めない副部長の逃避的な働きぶりに、最近は現場の若手課長クラスからも何とかしてほしいとの話が出るようになり、ついにこの幹部に様子を話した。

 その裏事情はこうだった。S氏は自分が部長ポストを任されると思っていたら、その道はなくなっており、さらにその会社も遅まきながら、懸案だった役職定年が57歳から実施されるという。60歳定年を迎えるまで5年、まだ現役の副部長だが、将来に期待がなくなった途端に、“実質定年”を意識したのだろう。前向きな気持ちがなくなり、大きな責任を伴う仕事は回避、とにかく無難に定年までを過ごす働きぶりが目につくようになってしまった。 

 このような部長を生まないための処方箋を以下でトリセツ的に考えてみたい。まずは、この人材タイプのプロフィールを眺めることから始めよう。

◇定年前OB化タイプ人材のプロフィール=評価が命の会社人間

*経歴:管理者としては普通の能力・実績、図抜けた力はない。昇進・昇格はやや遅め。

*能力:社内調整など業務処理能力は高い、リーダー適性は普通、組織統制は後ろ盾があればキチンとやれる。実務プレーヤーとしても手堅い仕事スキルを保持している。

*価値観:社会的見栄・世間体を気にする。仕事が好きなのではなく、上昇志向が強く、人の上に立ちたがる。仕事スタイルは、ルール順守、上から言われたことをキチンとやる。人事評価を大変気にする。

*人間関係:仕事をするのに常に障りのないよう一定の仕事ネットワークを保持する。深い人間関係を築くのは苦手。

*役職定年の受け容れ:なんとか管理者になったのに、それを途中で遮る制度には大いに疑問を持っている。自分の実力の程は知っており、制度には消極的に従う。今後何を励みに頑張ればよいか、キャリアの方向感や仕事への意欲を失いがち。

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「オレの時代は終わった、仕事は人に振る」

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