前回は、シニアの戦力化の考え方と定年前後社員のやる気について考えてみた。今回はシニアの戦力化活用を現実のものにするための、個人のやる気と活用度・貢献度を高める職場の取り組みについて考えてみたい。先の記事でも紹介した日本マンパワーの「ミドル・シニアのキャリア問題研究会」での意見等も紹介させていただく。
元部長・課長が再雇用で職場復帰
言いようのない緊張感・違和感はどこから?
「ねぇー、今度A元部長が再雇用でうちの部に来ることになったんだって」
「席はどこに置くのかな…」
「何の仕事するんだろね…」
これは、元上司の部長が自分たちの職場に戻ってくることが分かった若手社員同士の会話だ。
実際の役定・定年後の再雇用等で、元部長・課長がそのまま職場に残ることになると、職場の管理者もメンバーも、通常の新人配属のような歓迎ムードとは違った空気が漂う。組織も本人も何か言いようのない緊張感と違和感を持つ。
役職定年の制度は理解しているのになぜだろう?上司は気心知れた部下を使うようなわけにはいかないと考えるし、ベテランは気を使う対象がもう1人増えたと感じる。そして若手は、肩書のなくなった上司を何と呼べばいいのか、仕事にあれこれ口出しされたらヤダなー、と感じる。新入社員を迎えたような組織的ウェルカム!なムードはまずおきない。
多くの企業で、改正高年齢者雇用安定法に対応した65歳までの再雇用制度など、少なくとも役定・再雇用等の制度や仕組み作りはできている。しかし、その運用実態となると、上記のような企業や職場は多いのではないだろうか。
早くから、高年齢者雇用やその活用策に取り組んできた工場現場を持つメーカー企業などでは、現場のベテランシニア技能者を、現場戦力として長く活かし続け、文字通りシニア社員が現場を支える好例企業も多い。これは制度と、彼らを使う管理職の活用能力とともにベテランや若手がシニアと協働する能力が開発されているからだ。
だが、営業・販売やサービス系の企業では、この例のように、卒業した元管理者を再雇用で、上手く扱うことには慣れていないところが多い。言ってしまえば、“組織と個人の慣れ”なのだが、当事者となる再雇用シニアと彼らを使う管理者の双方とも、まだ役割変更後の“関係づくりが不慣れ”で、上司は遠慮、元部長は我慢、周囲は気遣いの職場になってしまうのだ。