前回は定年前後の揺れ動く50代シニア社員の胸の内と、そのシニア人材を役職定年~定年後再雇用の時期に上手く活用するための対策を見てきた。

 目下、筆者は日本マンパワーのミドル&シニアのキャリア問題研究会メンバーとして、企業の人事・職務開発担当者と職務開発の課題と対策を検討している。改正高年法(高年齢者等の雇用確保に関する法律)が昨年4月に施行され、今後65歳までの雇用が定着していくに従い、企業ごとの課題も鮮明になってくる。そこで今回は、この研究会での人事担当者のナマの意見等も紹介しながら、シニア活用の具体的な対策の立て方のポイントを考えていきたい。

(※)本来は職務開発と職域開発は区分されるものであるが、ここではシニアの雇用を増大させるための施策として職務開発に職域開発も含ませた使い方をする点を了解いただきたい。

定年前後の社員にあてがう仕事がない!?
雇用延長の裏で苦労するシニア社員の“職務開発”

 改正高年法が施行されてそろそろ1年を迎えようとしている。この法律で65歳までの雇用が義務づけられる以前から、継続雇用年齢の上限を段階的に引き上げていた企業がほとんどだったため、企業側では大きな混乱もなく制度の運用が始まった観がある。

 だだ、筆者がコンサルティングをしている企業の話を総合すると、上手く対応できている企業と、その一方ですでに再雇用シニアに適した仕事がないなどの課題が出始めており、今後大きな対策が必要となる企業に分かれている。

 上手くいっている企業は、主に経営環境の比較的良いメーカーだ。生産現場での若年人材不足の中でベテランのシニアを、割安な再雇用賃金で賄い、人材確保・組織活性化・生産性維持ができている企業に多い。

 一方、IT・商社・流通業などでは、現場に戻すにもシニアに適した職場や仕事は限定され、今後の余剰シニアが急速に増える企業も多い。

 課題が見え始めたIT関連や商社・百貨店等流通系などのサービス系企業では、徐々に60歳代シニアの再雇用を実現してきたものの、今後シニアの活用場所がないため、50代からの出向や60歳で再雇用を選択しない退職優遇制度など、早めの社外人材誘導を行う企業も出てきている。

 現実問題として、再雇用時の給与を引き下げても実際の現場にシニアを生かせる職場がそう多くはなく、無理に社内仕事を確保する必要が生じてきたからだ。現在はなんとか60歳超の再雇用制度を運用している企業も、今後5年~10年を見据えたとき、60代社員が10%を超えるようになってくるとさすがに、制度の在り方を再考せざるを得ないだろう。