前回から、これまで本稿を書きながら考えたことを総括しながら、今後のシニア雇用と個人のキャリアをより価値あるものにするための提言を行ってきた。最終回となる今回は、その続きとなる4つの提言を紹介していきたい。
※【提言1】~【提言3】はこちらから
【提言4】50代前半から対策を打つことで
70歳まで働くセカンドキャリアの準備をさせよう
シニアの戦力化には、「現有能力の戦力化」と「生涯能力の戦力化」がある。現有能力の戦力化は、新職務で“それなりに活用できる専門能力”を活かして採算のとれる戦力にすることだ。また、生涯能力の戦力化は、65歳まではもとより、仕事生涯を通じ、企業戦力として貢献できる能力を形成し活用することだ。現実に会社をはなれても、半数くらいのシニアが70歳くらいまで働いている。70歳現役社会はもう実現していると見たほうがよい。
優先的に手を打つべきは、現有能力の戦力化だろう。役職定年前後から定年前OB化など問題化するシニアが出現し始めることを想えば、やはり50代前半あたりの“弛みはじめ”の時期からキャリアデザイン研修などを通じ、職業人生設計を行い、今後の働き方や専門能力を高めることなどセカンドキャリアの働き方の準備をしておくことも大切だ。
再雇用で最も大きな障がいになるのは、個人の意識・価値観だ。多くのシニアが、セカンドキャリア期の働き方の理解とその心構えができていない。ファーストキャリアの生き方や価値観のままでは、セカンドキャリアは上手くいかない。上昇キャリアから下降キャリアへの転換期の受け止め方として、自己の内面を、次のセカンドキャリアに軸足をおいた価値観に転換できれば、意識面の切り替えは早い。
要は、仕事の目標や価値観の切り替えをどう進めるかだ。これまでのファーストキャリア期は、仕事で頑張り、会社で出世、個人生活は後回しの働き方をしてきた。今後のセカンドキャリア期は、仕事貢献しながら会社とよき関係を保ち、個人生活もバランスの取れた働き方を目指せばよい。
【図表-1】に示したような「キャリアの価値観軸」を変動させることが、その後の適応を円滑にさせる。
セカンドキャリアへの働き方への転換には、仕事に対する目標や価値観の転換が必要であることを先に述べた。この価値観の置き替えを上手く進める対応の仕方として、「自己調整」が挙げられる。