前回は、シニア活用調査結果から見た50代社員の評価ギャップ、現場関係者の50代社員に対するホンネの声などをみてきた。筆者の関心は少々問題も多くなった50代社員を自社の仕事ネットワークに上手に組み入れるために、組織や周囲はどんな対応を講じるべきかにある。
50代社員を取り巻く人事環境の変化、とりわけ役職定年・早期勇退制度にまつわる変化が、彼らに「キャリアショック」をもたらす結果、様々な変化への対応パターンが生まれている。実際、うまく役割変化を受け容れ、早めのセカンドキャリアを上手にスタートする方もいれば、上手くなじめず様々な問題を引き起こす方もいる。そこで第2回である今回は、これが50代の人材活用の課題となることを述べたい。
もう役職定年か、
オレってお払い箱にされるの……???
わが国の大手企業のほぼ5割(*)が、役職任期制・役職定年制など(以下「役職定年制等」という)、一定の役職期間・役職者の上限年齢を定め、ポストの明け渡しによる管理職者の新陳代謝を図っている。年功序列の風土は一新されつつあるが、経営環境の変化に対応するため、管理者の実力発揮正味期限を概ね50代半ばに設定し、“デキル管理者”もひとまず、この年齢あたりで卒業し、後輩に道を譲るというのが人事マネジメント上の常道になっている(役職定年・定年制是非の議論があることは承知だが、本稿では所与の制度の中でいかに人材マネジメントを行うかに焦点をあてていく点をご了解願いたい)。
*厚生労働省「平成21年賃金事情等総合調査(退職金、年金及び定年制事情調査)」によると、慣行による運用含め48%の企業が役職定年制を導入している。
会社にとっては組織の若返り、新陳代謝を意図した役職定年制度も、当の50代社員にとってこの制度・役割変化の受け止めは、複雑な気持ちだ。こんなに頑張ってきたのに、肩書き・権限は無くなる、給与は下がる、やりたい仕事は出来なくなる…もう、あなたに大きな期待はありませんからと言われたようなもので、まるで体よく会社のお払い箱にされたように感じる。希望退職などのリストラではないが、この役職定年による『キャリアショック』の現実は実際の定年とはまた違う残念な気持ちが残る。
人事制度上、自分にもいつかその日が来ることは分かっているが、雇用市場の厳しさが分かっているので、転職を考える人はまずいない。まだ先のことと思いながらも、自分の番が来ると、それに従うしかない。役職定年前後の時期はなんともモヤモヤしながらも、情けない気持ちに襲われる50代シニアも多いはずだ。
筆者はよく、役職定年者の研修に係わっている。人事担当者からの、説明は「長年の管理者としての働きに感謝申し上げます。わが社の役職定年制度はこうであり、今後は、ベテランの味を活かして、あらたな役割・立場での企業貢献、技能伝承、後輩育成に尽くしてください」である。この説明を聞かされる参加者は、『分かってはいるがなぜか面白くない…。なんで30余年働き、管理職として頑張っているのにここで終わりなんだ?まだまだこれから頑張れるのに…』という、50代半ばで“強制卒業”させられる管理者のなんとも腑に落ちない不満顔が見て取れる。