◇実例――1日が長く感じるようになった銀行員の課長N氏
筆者が以前に開かれた同窓会で、ある銀行の課長N氏から伺った話。N氏の入った銀行はこの30年で5回社名が変わったという。今は大手行に組み込まれたが傍系の彼の出身母体の人材は総じて、課長止まりだ。そんな中でも、卒なく手堅く仕事をまとめていくN氏は、安定的な業績を残し、組織の中小企業向け融資課長として、頑張ってきた。吸収された側の自分に昇進・昇格が望めないことは承知の上で、多くの新人・女性部下を指導しながら、安定した業績を上げ続けた。
この意欲的な働き方に大きな変化が訪れたのは55歳の課長役職定年の年。肩書きは部付の担当課長だが実質は融資相談担当。変調はこの年から始まった。管理業務はすべて後任の若手課長がやることから、自分に期待されているのは比較的額の大きい融資案件の相談だ。融資課は資金の借り換えなど結構忙しいが、N氏は日に数人の相談者の対応をするだけ。
ベテランの力を発揮して、実績を伸ばしてほしいとの期待は分かるものの、現場の実務を取り仕切ってきたN氏にとっては今の仕事は“閑職”としか思えない。「仕事に面白みを感じなくなってきた」、「まだ色々な挑戦もしたいが、もう頑張らなくていいからと言われているような気がする」とN氏の述懐。もう、自分の時代は終わった…職場の仲間の手前、あまり引けたことも言えないが、正直、一日が長く感じるという。
自分をとりまく環境変化も理解し、一見、割り切って、新たな役割にも上手く適応したかのように見えながらも、その内心は仕事のモチベーションが伴わず、あてがわれた仕事をこなすだけのホドホド現役になっていく。N氏のような心持ちで働く人をどうすれば、その意欲・モチベーションを再生させることができるのか、その処方箋を以下で考えてみたい。まずは、この人材タイプのプロフィールを眺めることから始めよう。
◇ホドホド現役タイプ人材のプロフィール
=上昇志向はあまりない割り切りタイプ人間
*経歴:管理者としては実直なタイプで、責任感が強く、小さな組織を上手にまとめ、手堅く実績を上げていく組織人。昇進・昇格は普通かやや遅め。
*能力:業務知識・組織運営など業務処理能力は高い。リーダー適性は普通より高め、自立心が高く組織目標を自己目的化でき、管理者のモデルタイプの一つ。また、現場の実務プレーヤーとしても高い仕事スキルを保持している
*価値観:自己の役割を積極的に捉え、自立的に仕事をこなす。役割意識が強く、仕事に対する責任感も強い。評価については恬淡としており、上昇志向もあまり強くない。努力し成果を上げればいずれ報われるという、素朴な組織信頼感を持っている。
*人間関係:仕事上の人間関係作りもうまく、部下の面倒見もよい。反面、あまり濃密な人間関係が好きではなく、上司・部下との関係も比較的あっさりしている。
*役職定年の受け容れ:会社が決めた制度には、割り切ってしたがう。ただ、自分の経験や実務能力には確たる自信を持っている方が多く、それが十分生かされない仕事で我慢するような働き方には残念な気持ちが残り、なかなか意欲が湧かない。評価は今更なくてもいいが、せめてやりがいのある仕事がほしい。



