前回は、50代の役職定年時期の問題人材のタイプのうち、定年まで無難に逃げ切ることだけを考えている「定年前OB化」人材の実態とその人たちの活用の方法を考えた。今回は、「ホドホド現役」人材についてみていきたい。このタイプは、役定により肩書がなくなると管理職の責任から解き放たれた気持ちになり、もうそんなに頑張ることもないと、割り切った働き方をする方だ。役職定年後現れるタイプとしては一番多いタイプだろう。

 元々強い昇進・昇格志向ではなく、年齢・能力相応に出世すればよいという人並みの上昇志向なので、肩書が外れても、現役固執化タイプや定年前OB化タイプのように、それほどショックとは感じない。だが、管理者を卒業したことで一役終えた気持ちになり、あとは気楽にホドホド現役になるこのタイプは、役割による割り切りがハッキリしている。立場や役割に徹し、少し醒めた目で組織や仕事をとらえるので、動機づけの点では、再活躍させるのが一番難しいタイプかもしれない。

 役職定年がシニア管理職に与えるキャリアショックには様々な現れ方があるが、最たるものは、働く意欲、モチベーションの大きなダウンだろう。管理職者として能力・意欲・体力がまだ残っているのに年齢で、その役割が強制終了されてしまう。元々、管理職が不得手だった人はホッとするかもしれないが、努力して管理者になり、そこでそれなりに成長した人は、その役割を自分の当たり前の棲み家(すみか)のように感じている。この強制終了が管理者としての自己役割の終了感と同時に、反動として、もうオレは管理者ではなくそのようにあってはいけない、と自ら引いてしまう。

 結果として、役職定年前後から、役割や仕事目標に対する気持ちの張りがなくなり、前向きな気持ちが失われる。会社からの期待もここまでか、まあ、そんなに管理者として大成するほど能力もないし…、後輩に道を譲れということならば、そのようにして、ここからは迷惑をかけない程度にホドホドに働くか…でも何か物足りないな…。これが、今回取り上げる、ホドホド現役社員の心情だろう。 

「ホドホド現役社員」の実態を理解しよう

「ホドホド現役」人材になるタイプの方は、前々回の「現役固執型」と対比すると、企業の期待としては組織のトップレベルではないが、手堅い管理者として、要所を守る実務に長けた人材として評価されてきた方が多い。強いリーダーではなく、そのリーダーを補佐するタイプのリーダー役だ。一方、与えられた組織目標については、目標を自己目的化し、強い責任感を持って完遂しようする下士官型の管理者イメージだ。

 協調性が高く、役割責任をきちんと果たすことを信条としており、むやみな上昇志向はない。管理実務に長けたベテランとして組織を支える人材の自負を持っており、あまり、他者の評価に惑わされることはない。むしろ、仕事そのものを大切にし、評価は二の次の傾向がある。

 管理者として働くことを自己目的化しているので、そんなに昇進・昇格や業績評価など外的動機づけを気にする方は少なく、むしろ役職定年によって自己基準としている“管理者らしさ”のバックボーンがなくなることにより、一種の“役割・目標喪失感”の中で、気力がなくなり自己完結的働き方に陥ってしまう方が多い。まず、事例をひとつご紹介しておこう。