フリーライダーというありがたくない勲章

「雇用保蔵」。あなたは、この言葉を聞いたことがあるだろうか。これは、過剰雇用、あるいは社内ニートなどとも呼ばれる言葉だ。経済産業省が潜在的な失業率(社内失業率)を推計しているが、潜在的失業者数と公式の失業者数との差を雇用保蔵者数という。たとえば2009年第1四半期の数値では、失業率が5%なのに対して、潜在的失業率は実に13.7%。潜在的失業者数は約905万人。雇用保蔵者数は600万人弱と推計された。

 推計であるから、正確な数字は誰もわからないのだが、内閣府の調査では、2011年9月時点で全雇用者の8.5%にあたる最大465万人が雇用保蔵状態とされた。こちらは、適正な労働生産性を基に推計される適正雇用者数と実際の雇用者数の差を「雇用保蔵」と捉えているのだが、いずれにしても、こうした数字が本当に過剰雇用者数であるとすれば、本人たちも大変だが、企業だってたまったものではない。

 雇用保蔵者とは、よりわかりやすく言えば、サラリーマンとして企業に雇われ、給料はもらっているのだが、それに見合うほど働いていない、給料に値する付加価値を出していない、要するにフリーライダーということだ。

 これだけ言われれば、もし自分がここで言うフリーライダーだとすれば、さぞかし肩身が狭いことだろう。しかし、本当にそうだろうか? これらは、あくまでも会社側から見た場合のレッテルなのだ。自分たちはは、好き好んでフリーライダーになっているのだろうか? 働きたくないから、さぼっているだけなのだろうか? 決してそうではないと私は思う。

役職定年は50歳に下がるのに
定年は65歳にまで上がる?

 巷では、役職定年の低年齢化が騒がれている。少し前までは、定年60歳に対して、役職定年は58歳というのが相場だった。ところが最近では55歳という数字がよく出てくるようになった。“Keep Young”を自任する会社では53歳という例もあった。ところが来年から、某大手家電メーカーでは役職定年をついに50歳に下げるという。つまり、今までずば抜けて若かった「役職定年53歳」という数字が、世の中の平均値になろうとしているのだ。一方で、定年は高齢化する傾向がある。本人が働きたければ、65歳まで雇わなくてはいけない。

 仮に最大を考えてみよう。50歳で役職定年になって、65歳まで再雇用等により勤めるとすると、実に15年間も“軽めの働き”を続けなくてはいけない計算だ。