ソーシャル・メディアが普及して、企業は厳しい評価にさらされるリスクを抱える一方で、コミュニケーションを通じた新しい可能性を手にし始めている。その立役者がCCO(チーフ・コミュニケーション・オフィサー)だ。ITによるビジネスイノベーションをけん引するオラクルは、2013年にこの職位を設置した。そのねらいは何か? 同社初のCCOに就任したボブ・エバンス氏に、現代の企業活動におけるCCOの役割と取り組みについて聞いた。

ビジネスのトレンドとITの関連を
ストーリーで語る

――CCOとは耳慣れない職位ですが、具体的にどのような任務を担っているのですか。

 ステークホルダーとの関係では、社会全体を対象にして世論形成を担うパブリック・リレーションズ(PR)、証券アナリストに対して事業の状況についての理解を促すアナリスト・リレーションズ(AR)、そして一般の投資家を対象にしたインベスターズ・リレーションズ(IR)があります。このうちPRとARが私の担う職務です。

オラクル
シニア・バイスプレジデント CCO
ボブ・エバンス氏
雑誌編集者、IT業界アナリストなどを経て2012年にオラクル入社。2013年にシニア・バイスプレジデントCCOに就任した。オラクルCEOのラリー・エリソンにオラクルに対する評価状況などをレポートするほか、世界4万社の顧客に向けてオラクルのビジョンや戦略、製品・テクノロジーが実現するビジネス価値の啓発を行う。Forbes.comでコラムを好評連載中。

 現在、ビジネスを取り巻く環境は従来に増して劇的かつ高速で変化しています。これに対応するには、変化の内容そのものだけでなく、底流にあるトレンドを理解することがより重要となってきています。

 例えば、データベースとビッグデータを活用して顧客の志向を的確につかむには、そのような取り組みが求められるようになった背景や取り組み自体の可能性を理解した上で、技術ロードマップを描き実現性を追求しなければなりません。

 オラクルは、7年ほど前から技術者を対象に、こうしたトレンドとITの関わりについての説明活動を続けています。そして数年前からは、CEOやCMO、CFO、CHOなどに対しても説明の機会を得るように働き続けています。

――オラクルは、なぜCCO職が必要だと考えたのでしょうか。

 顧客が大きなトレンドに向き合う際に、オラクルの製品がビジネスにどのような影響力があり、貢献するかを明確に説明できなければなりません。顧客のITを活用した製品開発においても、製品とエンドユーザーの関わりにまで踏み込んで、オラクルが貢献できることを提示する必要があります。それが、顧客の闇雲なIT投資を合理的なものに変え、TCO(総所有コスト)の低減にもつながるという思想があげられます。

 オラクルは、145ヵ国に40万社の顧客を抱え、12万人の従業員が働いています。しかし、従業員によってトレンドに対する見方が異なれば、当然、顧客への提案内容も変わり、また個別課題に対する技術的説明に熱心なあまり、経営課題の解決という価値を届けられないケースが出てきます。

 そこで重要になるのが、「オラクルはこう考えている」という全体のストーリーの共有であり、それを発信することです。「Simplify IT(簡素化されたIT)」で何ができるのか、それを推進するイノベーションの実態はどのようなものかといったストーリーを社内外に発信していくことが、オラクル自身の着眼を浸透させていく重要な活動になると考えたのです。