5つのメガトレンドへの対応

――トレンドの変化は、具体的にはモバイルコミュニケーションの活用といった部分に現出しているのですね。

 その通りです。そこで、ビジネスの成功を左右する流れを把握することが重要になってきます。現在のメガトレンドは5つに分類できます。

 1つ目は、2012年にはデバイス台数が90億台に達し、20年までには500億台に達すると予測されている「インターネット利用」。2つ目が、「データの急増」です。現在あるデータの90%が、過去2年間に作成されたものであり、20年までには50倍に増加すると見込まれています。

 3つ目が、世界人口の87%、60億人が加入する「モビリティの台頭」で、モバイル・データの年平均成長率は78%に達しています。4つ目は、コンシューマーが体験を主導する「ソーシャルビジネス」です。ある調査では、86%の人がソーシャル・メディアの活用により企業活動を営業停止に追い込めると考え、一方、94%の人が豊かな体験のためならば喜んで支出を増加すると考えています。ソーシャルビジネスは、まさに世界の人々の欲求と希望を衝撃的なパワーへと変換するのです。

 そして最後の5つ目が、「アプリケーションの刷新による競争の突破」で、いまだに導入から20年を経過した旧式のアプリケーションが多数存在し、ビジネスの構造転換を阻害しています。

――5つのメガトレンドに対する企業の現状の対応をどのように評価していますか。

 ある調査結果によれば、65%の企業が、ソーシャル・メディアについてブランド・イメージに対する重要かつ重大なリスクと認識しています。またモバイルでは、2014年までに90%が、個人保有のモバイル・デバイスで業務用アプリケーションをサポートする予定です。

 ビッグデータに関しては、「フォーチュン500」の90%の企業が、2013年末までにビッグデータを活用した取り組みを実施する予定です。さらにクラウドでも、企業リーダーの80%が、クラウドを事業の迅速化とイノベーションの強化を支援すると認識しています。

 ただし、次のようなデータがあることも忘れてはなりません。全世界のGDP約70兆ドルのうち、テクノロジーへの支出は約1.9兆ドルとされます。さらに詳細に見れば、そのうちの約1兆ドルが消費者向けのテクノロジーの創出に向けた支出であり、企業支出約9000億ドルのうち6~8割が、日常業務の維持に費やされています。つまり企業活動そのものへのイノベーションの投資はごくわずかで、豊かなテクノロジー体験の創造という意味では、企業ITはコンシューマー向けITに後塵を拝す状態になっています。