患者の日常生活自立度を可視化
~手術後の退院調整の質を上げる

 次に、入院から退院までのプロセスに視点を移すと、退院においては「日常生活自立度」というパラメータが重要となる。退院するためには、自分で食事ができる、自分の足で歩ける、自由に外出できるなどの生活自立度が、自宅で生活できる程度に高くないと退院できない。

 診療報酬改定により、在院日数の短縮化が政策的に誘導される中で、術後の生活自立度をいかに高め自宅に戻すかという、患者の退院後の生活にも配慮したケアが、大学病院でも求められているのである。

 生活自立度は、特に手術後の患者において重要となる。同院では診療科、疾患群、術式ごとに、入院した患者が術後1週間で生活自立度がどのように回復しているかを分析している(日常生活自立度の詳細)。手術時間や麻酔時間のデータとともに、「術後体温が37.5度以下に戻った日」「術後の摂食開始日」など、全身状態や栄養状態を指標化し、術後の生活自立度を算出しているのだ。

 当然のことながら、消化管の手術をする消化器外科では術後1週間の摂食不能率は高くなる。あるいは耳鼻咽喉科では頭頚部の手術を行うため、やはり食べられるようになるまでに時間がかかる(診療科別・日常生活自立度の変化)。これらの診療科では、特に術後のケアに配慮が求められる。

「ただし、こうした予測可能な診療科以外でも、時にアウトライヤーが発生していることがデータから読み取れます。そうしたアウトライヤーについては、何が原因で自立度回復が遅れたのか、詳細なデータの分析を行い、術前、術中、術後を通してトータルな業務の改善が必要となります」(紀ノ定氏)

 今回の診療報酬改定により、大学病院等の高度急性期・急性期医療機関が今後もその機能を存続させるためには、直近6カ月間の退院患者の在宅復帰率を75%に維持していかなければならない。それをクリアするためには退院調整の改善が必須なのであり、生活自立度を念頭に置いたトータルなケアがひいては患者の退院後の自宅等でのQOL増進にもつながるのである。