これをヤンゴン・ティワラ港からバンコクまでの海上輸送を陸送に切り替えるだけで、日本までの総輸送時間が最大で1週間程度短縮できる。「輸送所要時間が1週間縮まれば、日本国内で必要となる在庫の量が劇的に違ってくる。荷主のサプライチェーン効率化に貢献するためにも、何とかこの陸送ルートを太くしていきたい」と語る。
日系業者初、アジアで鉄道貨物サービス
昨年12月からは、マレー鉄道を活用して日系物流企業として初となる国際鉄道貨物輸送をタイ―マレーシア間で開始した。ASEANの大都市部でも顕在化してきている環境問題や道路混雑、ドライバー不足問題などに対応したもので、SS7000におけるトラック輸送を代替する狙いもある。最大で40フィート海上コンテナ27本を一度に輸送できるのが魅力だ。
当初は月1回程度の運行だったが、現在は週1便に拡大し、主にタイからマレーシアに向けに自動車部品を輸送している。「旅客列車との調整や線路のメンテナンスなどクリアすべき課題も少なくないが、将来的には週2便運行まで頻度を高めたい。環境にやさしい物流は日本が強くアピールしていける部分」と強調する。
官民連携で「日本型物流システム」を〝輸出〟へ
ASEANはまだまだ物流インフラが脆弱であり、日本国内と同等レベルのサービスを提供するためには、インフラ自体を整備していく必要がある。中村氏は欧米地域に進出する場合との違いについて「制度面に絡む話もあり、純粋なビジネスベースだけでは話が進まないことが多い。現地政府と良好な関係を築くことも重要であり、そのためにも国交省をはじめとする日本政府との共同歩調で取り組む必要がある」と官民連携の重要性を指摘する。
国交省は昨年6月に策定した「総合物流施策大綱」で、日本型物流システムのアジア地域への展開を最重要テーマに掲げた。我が国物流事業者が国内で磨き上げてきた「高効率・高付加価値・環境にやさしい物流サービス」をASEANなどアジア各国に〝輸出〟していこうという狙いだ。「アジアは民族的にも日本人と近い人たちが暮らす地域。そこで、欧米の物流企業に負けるわけにはいかないというのが日本政府や我々の共通意識。そのためにも、日本スタンダードともいえるきめ細かい物流サービスをASEAN各国にどう移植していけるかが焦点になる」と〝オールジャパン〟での取り組みの必要性を強調する。
そうした官民連携の取り組みのひとつが、今年2月に国交省と日通がシンガポール―ジャカルタ(インドネシア)で行ったRORO船(ロールオン・ロールオフ船=トラックなどの車両がそのまま乗り入れできるフェリー型の貨物船)のパイロット事業だ。
インドネシアなど「海のASEAN」における物流はコンテナ船が中心であり、トラックが直接乗り入れできるRORO船による輸送が定着すればASEAN全体でのトラックによるドア・ツー・ドア輸送が可能になり域内連結性はさらに高まる。
「RORO船は航空輸送より安価で、コンテナ船よりも早いという中間的な輸送手段。そもそも高いコストを払ってASEAN域内で航空輸送する必要があるのかという議論は根強い。まだ先行投資的な面が強く制度面でクリアすべき課題もあるが、潜在的な需要は確実にある」という。ちなみに、高性能RORO船は日本の高い造船技術でしかつくれないこともあり、仮に南シナ海で高速RORO船網が整備されることになれば、まさにオールジャパン体制によるプロジェクトになるだろう。