日本で培ったノウハウを水平展開
「点から線、そして面へ」――。中村氏はASEANにおける日通の展開イメージをこう表現する。各国で整備が進む倉庫などの物流拠点やSS7000に代表される輸送インフラが「点」や「線」だとするなら、それらが形となりつつある現在、展開は次のステージに入ってきたといえるだろう。
「例えばタイでは自動車部品のミルクラン集荷(メーカーが必要とする原材料や部品を、各工場を巡回して集荷する方法)やJIT(ジャスト・イン・タイム)納品など、大都市部での面的な展開はかなりのレベルまで進んできた。今後は同様のモデルをベトナムやインドネシアなどに水平展開していくこととなる」。
取り扱う製品にも大きな変化が起きている。これまでは自動車や電機関連などのメーカー物流が中心だったが、ASEAN各国の人口増加や所得水準が上がったことで国内消費が増加、それを受けて日本の量販店や通販事業者の進出が加速している。
「地域で調達したものをその地域や国内で消費するいわゆる国内完結型の物流が急速に増えている。昨年1年間で日通が扱った案件数では自動車物流にほぼ匹敵するまでになった。例えば、小売業ではマザーセンターを設けてエリア内の店舗に時間指定で納入するなど、仕事の内容は当社が日本国内で手掛けているものとまったく同じものも少なくない」。
日通の国際物流はこれまで、航空事業部や海運事業部といった部署が主に担ってきた。だが、アジア各国における〝国内物流〟が増える中で、従来の「国際物流=輸出入物流」という概念は大きく変わりつつある。「幸い、日通は国内物流で育ってきた会社。倉庫運営、トラック輸送など日本で培ってきた高いノウハウを海外で活かすチャンスでもある。ASEANでも国内物流、域内物流の需要をしっかり取り込まないと市場を押さえたことにはならない」と強調する。
日通のアジア戦略の〝本気度〟を示す格好の事例がある。「ハラル物流」への取り組みだ。