その企業ならではの文化、雰囲気、仕事の進め方──。こうしたいわく言い難い要素を総称する言葉に「社風」がある。学生の採用において、学歴や資格といった目に見えるフィルターと並んで、社風が重要なマッチングキーとなっていることは採用担当者のみならず、広くビジネスパーソンも首肯できるところだろう。しかしながら、社風の認識には個人によって揺らぎがあり、採用担当者としては「基準化」することがためらわれることも事実である。そうした中で、この特集では、社風を無理に形式知化することなく、積極的に採用活動に取り入れている企業の取り組みに注目。採用システムにおける社風活用の在り方を探る。
重要でもシステム化することは難しい「社風に合う」
「結局のところは一緒に働きたいと思うかどうか」──。
新入社員を採用する際の重要なポイントを、そのような言葉で説明する採用担当者は少なくない。「個性や価値観が社風とうまくマッチしていれば、その人はわが社に適性がある」というわけだ。
しかし、「社風」とは一種の暗黙知であり、定義付けることは簡単ではない。その会社に勤めている社員にとっては共有されていても、外部に居る人にその全てを説明することはほとんど不可能──。社風とは、そのような微妙なニュアンスを含んだ何か。そこから、「社風という言語化も定量化もできない非合理な要素を、採用の基準にはできない」という意見も生まれることになる。
事実上、採用の決定的な要因となっているが、それを決定的要因とは明言しにくい──。採用活動に社風を活用することには、常にそのようなジレンマがつきまとう。では、社風をもっとポジティブな要素として活用することはできないのだろうか。
アサヒビール、アルケア、大阪ガスの3社は、それぞれ特徴的なやり方で、社風を採用活動に積極的に取り入れている。3社に共通するのは、社風を活用することに積極的な理由があり、それが採用の成果に明確に結び付いているということだ。