国際物流が生産工場の1ラインになった
「ものづくり日本」の課題

UPS × カーゴニュース × ダイヤモンド・オンライン
秋田 恵介 (あきた・けいすけ)UPSコーポレート・グローバル アカウント  バイス・プレジデント。2001年1月UPS入社。大手顧客の営業担当や、アジア太平洋地域の大手日系企業の営業責任者などを歴任し、2014年12月より現職。

秋田 やはり、長い目で見て生産拠点は低コストの国々へとシフトしていかざるをえないでしょう。アメリカでも生産拠点の国内回帰が見られるものの、それは一時的な現象でしょうし、すべてが国内に戻ってくるわけではないでしょう。

原  実際、資料のp.22に詳細がありますが、今後の予測として「海外取引先が増加する」「日本を介さない物流取引・三国間輸送が増加する」としている答えが非常に多くなっていますね。

 足元では円安でも、少し前までは2008年から続いた超円高基調に製造業は苦しみ、生産拠点を海外へ移してきた経緯があります。その動きのなかで「三国間輸送」も増加しました。これによって、企業に起こった変化は具体的にどのようなことでしょうか。

生産拠点が世界中に散らばり
国際物流で「運ぶもの」が変わった

西村 子どもの頃の教科書にも書かれていたように、日本の貿易の形態は、原材料を輸入してそれらを加工し、完成品を海外に輸出するというものでした。ところが、生産拠点の海外シフトに伴って、日本企業が国内や海外で部品を調達し、海外で生産を行なってそのまま日本以外の国に販売することが増えています。つまり、最近は完成品よりも素材や部品の輸出が増えているわけです。

 ここでも「三国間輸送が今後も増加する」としている企業の意識について調査されていますが、薄型テレビをはじめとする完成品の輸出が目立っていたのは、もはやリーマンショック以前の過去の話です。

西村 旦(にしむら・たん)カーゴニュース編集長。1992年株式会社カーゴ・ジャパン入社。『カーゴニュース』編集部記者として、物流事業者、荷主企業、関係官庁などを幅広く担当。2011年代表取締役社長兼編集局長に就任。同年、幅広い交通分野での物流振興を目的として創設、優良な論文などを顕彰する「住田物流奨励賞」(第4回)を受賞。

 これを受けて、日本企業の国際物流の在り方にも変化がうかがえます。かつては完成品を海外で売るための「販売物流」が中心でしたが、製造工程へ部材やパーツを届ける「生産物流」へと変貌しています。

 つまり、国際物流という輸送自体が工場のラインの一部と化しているのです。実際、航空などの主要な貨物もパーツを運ぶことが増えていますしね。これは「販売物流」以上に高度なマネジメントが必要で、ヘタをすれば工場の稼働が停止しかねません。

 東日本大震災直後もサプライチェーンの寸断によって日本企業の生産が麻痺しましたが、国際物流上のトラブルでそういった事態が発生することもありうる。しかも、その同じ年にはタイの洪水で日本の自動車や電化製品の生産が止まりました。

「販売物流」の場合は単純に完成品を輸出し、それを現地で販売すればいい。これに対し、「生産物流」の場合は製造工程における川上から川下まで広く関わる。グローバルにこの「生産物流」が主流となってきている今は、「生産」と「物流」がこれまで以上に密接な関係になる。ロジスティクスに関して極めて高度な管理が求められているわけですね。

秋田 しかも、国際物流では、日本国内の物流にはない不安定要素が多数発生します。そういった条件下で、生産ラインを計画に沿って安定的に稼働させていくことが企業の大きな目標となっているのです。ところが、海外の生産拠点と日本国内のホストシステムが統一されたプラットフォームで動いていないケースも多く、社内で部材の供給状況さえよくわかっていないことも珍しくありません。ここで大きなロスが生まれがちなのが実態です。

 生産拠点がグローバルに散らばっている中で、過剰に作ると在庫を抱えてしまうし、発注計画がいかに適切であっても、供給サイドからの納品が遅れてしまうと狂いが生じます。そういった環境下で”全体最適”の輸送が求められるようになってきました。

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