国際物流が生産工場の1ラインになった
「ものづくり日本」の課題

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物流コストを「単なる支払いコスト」
と捉えるマネジメントの危うさ

西村 物流は粛々と流れているときはいいですが、何か事が起こったときに顕在化する。これまで議論してきたように、国際物流は必ずしも日本が起点になるわけでなく、三国間物流も今後どんどん増えてきます。そうなると、全世界にネットワークが必要になってきます。

 それに対しては当然コストが発生します。この調査のp.30にも表れているように、物流の課題は「コスト」という答えは多い。ただ、それは「適正かどうか」という点を押さえる必要があります。受けているサービスの内容・質への対価で判断すべきであって、絶対額での問題ではないと考えるべきでしょう。

 物流に関するコストは単なる「支払い物流コスト」という点が一番切り出しやすいですが、そこだけを見てしまうと見誤ります。生産計画や世界中に散らばっている在庫等も含めトータルで見る必要がある。たとえ、支払い物流コストが上がったとしても、全社としてそのコストが高いのか、安いのか。輸送だけでなく、生産だけでもない、全体最適を判断する、サプライチェーン・マネジメントの視点が不可欠です。

 ですから、今、海外の生産拠点が多い企業ほど、国際物流を企業戦略として見渡す担当役員のようなポジションが必要でしょう。

 これだけ海外の生産拠点が増えている今、そこを持たないと逆にムダが発生する。コストを考えて海外進出してるのに本末転倒ですね。世界中に散らばっているものを俯瞰して、効率的・効果的に管理する。しかもジャッジできる権限がないと意味がない。

秋田 そのご指摘はもっともだと思います。少し前に、アメリカの西海岸で港湾の労使交渉が難航し、ファストフードチェーンのポテトが供給できない、という事態が起こりました。ああいったことは、いつどこで起こるかわかりません。

 また、過去にあった例ですが、企業内部の問題として、日本側ではGOサインが出ていることでも、アメリカ側では「それではコストが掛かるから」と言って実現しないことや、物流部門はこうしたいと思っていても製造部門がOKを出さない、といったこともあります。また、現場の担当者は「高額な商品だから全体最適を考えて航空で運びたい」と考えているのに会社側がどうしても「船で運べ」という、ということもあったり……。

 物流担当の方は、いろいろな提案をしても、他の部門などからの反対を受けてしまい、その結果物流コストが上昇すれば、数字だけを見て物流部門が責任だけ問われるということもよくあるようです。

 そのような「内部の壁」がある場合、私たちは課題解決の糸口としていただくために、「サプライチェーン・マッピング」という作業をご提案しています。どこに壁があるのか、どこに問題があるのか、それを図にして、私たちがコンサルタントとなってお客様のサプライチェーンを紐解きます。そのうえで、物流部門、製造部門、流通部門、営業部門など各部門の担当者にも集まっていただいて問題点や解決策を示すとともに、お客様のニーズに応えるソリューションを提案しています。

 製造業はモノの価値の競争ではなく、顧客のニーズを満たすことが大きな競争になっていますから、質の良いモノを作るだけではなく、サプライチェーンの最適化によって顧客の満足度を高めることも重要になっていると感じます。

 それを実現するためにも、先ほどのお話のように、マネジメントのトップの方が全体を見渡す構造を企業として持つことが求められていると思います。

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